第十六巻と第十七巻と第十八巻

祝日。紀元節
小学館藤子・F・不二雄大全集」の「ドラえもん」第十六巻、第十七巻、第十八巻を一気に読んだ。
この「大全集」の妙味は、「ドラえもん」を連載していた雑誌群の主力と云うべき小学館の所謂「学年誌」(「小学一年生」から「小学六年生」までの六誌)に掲載された全作品を、「年代別」の「学年繰り上がり方式」で集成した点にあるが、この「学年誌」掲載分の作品集は第十七巻までで完結。
流石に円熟の作品群に満ちている。第十七巻の最後には、平成六年(一九九四)、「小学三年生」と「小学四年生」と「小学五年生」の三誌で七月号から九月号まで三ヶ月にわたって同時に連載された大作「ガラパ星からきた男」が一挙に掲載されている。
そして第十八巻には、小学館の「幼稚園」、「よいこ」、「てれびくん」別冊付録に掲載された作品群が集成されている。幼児向けの作品が意外に面白い。絵が特別に丁寧で愛らしいし、話は極度に短いが、無駄なく分かり易く楽しめる。
のび太の手強い恋敵、出木杉英才が単なる敵ではなく友でもあったらしいことは、第十五巻の「テレテレホン」、「時限バカ弾」、「ツーカー錠」から感じられるが、第十六巻の「しずちゃんをとりもどせ」では、将来、のび太出木杉の間に家族ぐるみの信頼と友情が続いているだろうことが明かされる。源静香出木杉の間の性別を超えた友情の深さが、のび太出木杉をも結び付けたに相違ない。同じく第十六巻の「ふたりっきりでなにしてる?」では、静香と出木杉が二人で一緒に、八月七日、のび太の誕生日のためにケーキを作り、家まで届けて一緒に祝福するに至った。
さらに興味深いのは第十七巻の「恐怖のディナーショー」。のび太ジャイアンのディナーショーのチケット販売を一任されて困り果てていたとき、静香までも逃げてしまっていた中で、唯一の協力者として登場したのが出木杉。もはや一番の親友にしか見えない。ジャイ子までもが、のび太に対して親切な一面を見せる点がこの話を味わい深くしている。