漫画ハイ☆スピード!上下&小説ハイ☆スピード!2

おおじこうじの小説『ハイ☆スピード!』に基づく手代木史織の漫画『ハイ☆スピード!』上下二巻を一気に読んだあと、おおじこうじの小説『ハイ☆スピード!2』を一気に読んだ。
小説『ハイ☆スピード!』はテレヴィアニメ「Free!」の「原案」になっていて、「Free!」の中で度々回想される過去の物語であると同時に、映画「ハイ☆スピード!」の物語の直前の物語でもある。この原案の小説を未だ読んではいないが、コミカライズ版を今日ようやく読んだということになる。「Free!」のキャラクターデザインを手がけた西屋太志がこの漫画のキャラクター原案も手がけているので、違和感なく読み進み得た。面白かったが、これが小説の物語をどこまで再現しているのか、それともアニメ側に近付けているのかについては、やはり小説を読んでみないことには判断できない。
小説『ハイ☆スピード!2』は小説『ハイ☆スピード!』の続編であり、映画『ハイ☆スピード!』の原作でもある。今、ようやく原作小説を読んでみて、映画とは全く異なる物語だったことに驚かされた。しかし展開こそ全く異なってはいても、どういうわけか、同一の世界における同一の人々を描く別の物語として見ても大して違和感がなかった。小説と映像の違い、上映時間の制約、アニメ制作の可能性と限界等の条件から、物語を圧縮するだけではなく変更する必要もあったに相違ないし、もちろん「Free!」において成功した要素をどのように盛り込んでゆくのかという条件も重要だったろう。結果、小説『ハイ☆スピード!2』とは異なった別の物語を映画『ハイ☆スピード!』で得ることができたのは幸いなことだったように思われる。
映画と比較して興味深かったことが多かったが、それらの中の一つとして、桐嶋夏也の印象が微妙に異なる点がある。この小説でも、表紙絵や挿絵を西屋太志が手がけているが、そこに桐嶋夏也の姿はない。映画の中で最も輝かしい人物だった彼のキャラクターデザインが、原作小説の刊行の時点では決まっていなかったこと、それどころか、映画制作の際にも最後まで難航したことは『公式ファンブック』で明かされていたが、なるほど、原作小説を読んでみれば、別のイメージを得る可能性もあったかもしれないことが肯けた。
もう一つ挙げるなら、椎名旭と鴫野貴澄との間の特別な友情の厚さがある。映画では喧嘩をする程に仲が良いという形で両名の友情が描かれていて、それも良かったが、原作小説ではもっと暑苦しい程の厚さがあった。「ハイ☆スピード!」には裏面の物語として、鴫野貴澄の物語もあったと云えなくもない程だった。