てんとう虫コミックス怪盗ジョーカーミラクルファンBOOK到着

注文しておいた小学館てんとう虫コミックススペシャル『怪盗ジョーカーミラクルファンBOOK』が到着。面白い内容で、一気に読み終えた。
監督の寺本幸代、キャラクターデザイン&総作画監督しもがさ美穂、脚本の佐藤大が気に入っている話として挙げた中で共通しているのが第二十話「トラベリング・ジョーカーズ」であるのは大いに肯ける(59頁、60頁、63頁)。脚本家三人の鼎談の中で佐藤大が第二十話を挙げたのを受けて、うえのきみこが「上映祭の大スクリーンで見ると、もう映画でしたね!」と発言しているが(63頁)、あの大迫力の映像を実現し得た理由について、寺本幸代は「絵コンテ・演出を山下明彦さんに担当して頂けた」ことを述べている。それは「偶然」による「不思議なご縁」だったらしい。山下明彦は「ジャイアント・ロボ」のキャラクターデザインを手がけた人だそうで、なるほど、カラクリ盗賊熊太夫の金有屋が作った巨大カラクリ金太夫のあの凄まじく大きさを感じさせる描写には圧倒された。風魔忍者イチ率いる忍者軍団や鬼山の旦那と手下の集団、江戸の民衆それぞれの群衆描写も躍動感に満ちていた。そしてジョーカーとシャドウ・ジョーカーは、愛嬌ある面もあれば颯爽と格好よい面もあって実に表情豊かだった。
ジョーカーを演じる村瀬歩とシャドウ・ジョーカーを演じる斉藤壮馬の対談も面白い。斉藤壮馬は「劇場版怪盗シャドウ・ジョーカー」を制作して欲しいと訴えているが、確かに、見てみたい。
巻末には原作者たかはしひでやすによるファンBOOK限定の特別篇「小さな楽園の記憶」が掲載されていて、これの主人公がシャドウ・ジョーカーことシアンと妹の魔法少女ローズ。
シアンとローズの兄妹は、ジャック(のちのジョーカー)に出会うよりも三年以上も前に、両親を病で亡くしていた。それでも、「魔女のかくれ村」の人々は優しく、兄妹を皆で育ててくれて、まだ幼かった二人は不自由なく生活できていた。もしプロフェッサー・クローバーに狙われることがなければ、ローズは一人前の魔女になって村人たちに頼られる立場になっていたろう。シアンは魔女ローズを見守りながら農業でも営んで穏やかに生きることもできたかもしれない。その場合、世界中を旅行したいという夢を持つことにはならなかったかもしれないが、それでも、村の近くに迷い込んだジャックと出会うことにはなったろうから、世界一の怪盗を目指しているジャックから何か刺激を受けて、やはり世界旅行を夢見たかもしれない。何れにしてもシアンとローズの兄妹は「魔女のかくれ村」という「小さな楽園」で平穏に生きてゆく将来が約束されていたはずだった。その全てはプロフェッサー・クローバーによって破壊され、奪われてしまったのだ。
ところで、現在放送中の「怪盗ジョーカー」シーズン3における悪役、プレジデントDについて、原作者たかはしひでやすが46頁で「「D」の本当の意味とは…!? 原作者自身もびっくりです」と述べているが、「D」と聞けば、40頁には第二十一話に登場したダンプという嫌なガキが載っていて、こいつの目元や髪の色や服装はプレジデントDの目元や髪の色や服装に酷似している。カネ子とコマンドー殺子は性別を除けば何一つ共通点がないのに比較するなら、ダンプとプレジデントDには共通点が多過ぎる。

怪盗ジョーカー ミラクルファンBOOK (てんとう虫コミックススペシャル)