テレヴィアニメ怪盗ジョーカー第四十七話

テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」第四期。
第四十七話(シーズン4第八話)「漆黒の闇(ダーク・オブ・ダークネス)へようこそ」。
今週もNTTひかりTVのWEB配信で視聴。原作は小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第二十巻に収録された「漆黒の闇(ダーク・オブ・ダークネス)へようこそ」。
待望の、シャドウ・ジョーカーとローズが大活躍する話。ラジコン人形の小さなジョーカー(「ミニ・ジョーカー」)が登場する点でも待望の話。
原作のこの話には、シャドウ・ジョーカーの「大いなるダーク・オブ・ダークネス」や「ブラッディー・カーニバル」という思い切り格好よい台詞をジョーカーが馬鹿にしたのを受けて、妹ローズが兄シアンの幼少期の様子を暴露してしまう楽しい場面がある。アニメ版でもそれが忠実に再現された。実に楽しい。
しかし原作とは違ってアニメ版のこの話では、シャドウ・ジョーカーよりもハチに大きな見せ場を与えている。苦難を切り抜ける最後の最大のトリックは、ジョーカーが想い着いたわけでもなければシャドウ・ジョーカーが実行したわけでもなく、ハチが発想して実行した。そしてシャドウ・ジョーカーと妹ローズとの間の家族愛が描かれたのは原作の通りだが、アニメ版では、ハチとジョーカーとの間の家族同然の愛も描かれた。
このような変更に関連するのが敵の変更であるのは明らか。原作では大富豪ガメツ・ザイポーという中華風の怪人が敵として登場するのに対し、アニメ版では毎度馴染みのミスター金有が敵として登場した。しかも事件の現場はミスター金有の邸宅。シャドウ・ジョーカーとローズはそこを初めて訪れたが、ハチは既に一度、そこに来たことがあった。第一話(シーズン1第一話)「奇跡の怪盗(ミラクルメイカー)あらわる」でのこと。少年忍者ハチが初めて盗賊として活動した夜。ミラクルメイカー、怪盗ジョーカーに初めて出会い、苦境をも好機に変える彼の「奇跡」のトリックを目の当たりにして完全に惚れ込み、憧れ、弟子にして欲しいと志願した。ハチにとっては決して忘れることのできない美しい思い出の夜に他ならない。ジョーカーにとっても、ハチの料理によって完全に胃袋を掴まれてしまった特別な夜だった。
ハチが見事な奇跡を生み出して苦境を逆転させてみせたことは、あの夜、ジョーカーに出会ったハチがどんなにかジョーカーに憧れ、助手となって活動しながらジョーカーの精神を学び続けてきたかを物語る。ジョーカーがハチを救い出した場面は数多いが、ハチも、ジョーカーを救うためにはどんな手をも辞さないのだろうことも容易に想像される。そのことは、「この身がどうなろうともローズだけは守ってみせる」と断言するシャドウ・ジョーカーの強い思いにも重なり、云わば二重写しのように表されていた。
こうして再び、物語は小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第二十三巻に収録された名作「不死鳥と魔弾の射手」を連想させる方向へ歩んでいる。
それにしても、シャドウ・ジョーカーとローズには華があるし、強力な面白さもある。このところ出番が乏しいのは実に惜しいが、今回の出番はその渇望を充たし得たばかりか、シャドウ・ジョーカーの思いがハチの思いの相似形をなしたことで物語の流れにも大きく寄与したと認められよう。
実のところ、シャドウ・ジョーカーは今までに少なくとも二度、ジョーカーによって人生を変えられてきた。一度目は幼少期、少年ジャック(のちのジョーカー)と初めて出会った日。二度目は、真の宿敵プロフェッサー・クローバーとの決戦の夜。しかもその間、ギリシアにおける怪物メデューサとの死闘や、二百年前の江戸における巨大カラクリ人形との死闘においてシャドウ・ジョーカーとジョーカーは共闘し、完全に息の合ったところを見せてきた。ハチがジョーカーとの出会いによって人生を変えられたように、シャドウ・ジョーカーもまたジョーカーとの出会いによって人生を変えられた。ハチとスペードとシャドウ・ジョーカーには実は似た面があると云える。シャドウ・ジョーカーがジョーカーの作戦を受け容れたいと申し出たのに、ジョーカーが全く聴いていなかった展開も楽しかったが、あれは同時に、ジョーカーに対するシャドウ・ジョーカーの、さり気なく敬愛の念の告白にもなっていた。
シャドウ・ジョーカーとコマンドー殺子との戦闘も今回の見せ場の一つ。最強の戦士コマンドー殺子がシャドウ・ジョーカーの強さを認め、「おまえ、なかなか良い目をしている」と称賛したことも見落とせない。