マギ第十六巻

昨日までの休日三日間、大いに活動した影響で、今日は活力を欠いて、夕食後に凄まじく眠くなり、起きたのは翌朝六時。
大高忍『マギ』第十六巻。
カヴァーに「魔導士の、魔導士による、魔導士のための16巻!」と記され、魔導士の格好をした「待機非魔導士組」のモルジアナとアリババが描かれている。両名の帽子には「ガンバレ アラジン」と書かれているように、この第十六巻にアリババとモルジアナは、アラジンによる言及や回想を除けば、登場しない。あくまでもマグノシュタットにおけるアラジンの物語。
この恐ろしい場所で、アラジンには新たな友が二人できた。一人はもちろんエリオハプトのスフィントス。スフィントスが崇拝するのは、シンドリアのシンドバッド八人将の一人、シャルルカン。だから元来アラジンと近しい関係にあり得る人物であるとも云えるが、多分、アラジンは未だシャルルカンへのスフィントスの思いを知らない。しかしアラジンに対するスフィントスの関係は、アラジンに対するアリババの関係を思わせる。
もう一人は、レーム帝国から来たティトス・アレキウス。レーム帝国の元老院を制圧する名族アレキウス家の貴公子。美しい容姿のゆえにアラジンはティトスを「おねいさん」かと期待し、胸をもんで実は「おにいさん」であることを確かめた。アラジンをも凌ぐ高等な魔法を操るティトスの力量は、伝説の魔導士ヤムライハを想起させると評価された。ヤムライハはシンドリアのシンドバッド八人将の一人で、アラジンの魔法の師。今はシンドリアへ亡命中で、マグノシュタットにとっては反乱分子であるはずだが、その偉大な能力は今なお「伝説の天才」と評価されているらしい。そしてティトスの成績はヤムライハのようであると形容されたのであるから、アラジンも少々複雑な心境にならざるを得なかったろう。
ティトスの魔法の師は、レーム帝国のマギ、シェヘラザード。マグノシュタットの内情を探るべく、シェヘラザードからの密命を受け、潜入のため学院へ入学していた。シェヘラザードと交信するため、腕に「ルフの瞳」のような宝石を着けている。それはアラジンがマギの力を封印するために着けている宝石によく似ている。ゆえにティトスもアラジンも互いを同じ立場であるかと感じた。ティトスはアラジンに、主がユナンであるのかジュダルであるのかを訊ね、アラジンは自分自身がマギであり、四人目のマギであることを明かした。ティトスは信じなかったが、以後、ティトスとアラジンの関係は深まった。
アラジンは、魔法の能力に関してはティトスに劣るが、体力で補うことで魔法の消耗を防ぎ得る点でティトスに優る。アラジンの体力を鍛えたのは最下級の教室における鬼教師マイヤーズの厳しい修業(第十四巻)だが、マイヤーズは単なる鬼教師ではなかった。実はマグノシュタットでも屈指の上級魔導士で、ドロンの姉。マグノシュタットを支配する学長モガメットの真の意向を知り、アラジンの才能をよく見ている。
そしてモガメット。ヤムライハはモガメットの支配体制に反抗してシンドリアへ亡命したから、アラジンはモガメットに警戒心を抱いていたが、実際に接してみて、アリババや黄牙の村長ババ様にも似た優しさを感受した。何か意外な真相がありそうであると感じさせたところで第十六巻は終わり。十七巻へ続く。