琴音らんまるコミカライズ君の名は。における三人組

新海誠原作/琴音らんまる漫画『君の名は。』第三巻を漸く読んだ。映画「君の名は。」のコミカライズ版の完結編。
独自な解釈として注目に値するのは、糸守町役場の町長室に駆け込んだ宮水三葉の表情に、宮水俊樹が亡き妻、宮水二葉の面影を見出している点。
興味深いのは、宮水三葉(の姿をした立花瀧)によって彗星が落下すると予言された日の夕方、大胆な避難計画を決行する直前の、勅使河原克彦(「テッシー」)と名取早耶香(「さやちん」)の行動と心境が詳しく描かれている点。
これに関連して興味深いのは、彗星の落下の八年後を、映画(原作)では立花瀧の側から描いたのに対し、このコミカライズ版では宮水三葉の側から描いている点。当然、東京における宮水三葉と、勅使河原克彦名取早耶香との交際も描かれている。久し振りに会った三人が一緒に昼食を摂った場所がイタリア料理店「il giardino delle parole」(「言の葉の庭」)。しかし生憎、そのとき就職活動に忙殺されていた立花瀧と、そこで遭遇することはなかった。宮水三葉と別れたあと、その寂しそうな様子を心配しながら両名はスターバックスへ場所を移して、結婚式場の相談を続けた。立花瀧スターバックスで聞こえてきた「テッシー」と「さやちん」の会話に何か奇妙な懐かしさを感じた場面は映画の終盤における最も印象深い瞬間の一つだったが、驚くべきことに、コミカライズ版ではそれがここに接続されている。実に面白い。
一つ残念だったのは、東京における糸守町の人々の生活を描く箇所で、あの三人組の内一人が抜け落ちてしまっている点。宮水三葉の悪口を、本人に聞こえるように堂々云っていた三人組の名が「松本」、「桜」、「花」であることは映画パンフレットの37頁において明らかにされている。そして映画の終盤、東京へ移住した糸守町の人々を描く場面で、住宅街のゴミ集配所にゴミ袋を出している髪の長い女子が三人組の花であることも同じパンフレットの40頁で明らかにされている。ゆえにコンヴィニエンス店ローソンのレジで働いているのが三人組の松本、牛丼店で食事をしているのが三人組の桜であることは自明であると云える。しかるにコミカライズ版ではローソンの松本と牛丼店の桜のみ描いて、ゴミ出しの花を描いていない。少しだけ残念ではあるが、甚だ些細な問題ではあるし、致し方ない面もある。なぜならコミカライズ版の第一巻を見直してみるに、実は三人組が明確には描かれていなかったと判るから。松本が松本の姿になったのは静物デッサンの授業の場面で、最初の街頭演説の場面や口噛み酒の場面では髪型が違っていて、松本には見えない。花は最初から花の姿で登場しているが、桜は、街頭演説の場面には登場しているのに、口噛み酒の場面では髪の色を変えていて、静物デッサンの場面には登場しない。要するに、コミカライズ版「君の名は。」には事実上、あの松本と桜と花の三人組は三人組としては存在していないと云うも過言ではない。