女優ジャンヌ・モローとNHK特集ルーヴル美術館

 毎朝、目覚まし時計の代わりにテレヴィが所定の時刻に点くように設定してあるので、テレヴィを視る意はなくとも少なくともテレヴィの音声を耳にする。それで今朝、NHK朝六時台のニュースでフランスの偉大な女優ジャンヌ・モローの訃報に接した。
 映画に疎いので海外の俳優の名を大概は知らないが、ジャンヌ・モローの顔と名を知っているのは、大昔、NHKがフランスTF1と共同で制作し、約一年間にわたって放映して人気を博した名番組「NHK特集 ルーブル美術館」に出演していたから。あの番組で最も目立っていたのは女優デボラ・カーで、特に、盛期ルネサンスの名作を取り上げた際の終盤、ヴェロネーゼ筆の超大作《カナの婚宴》を眺めたあと、その場を立ち去るときのドレス(否、むしろコート?)の翻る姿の華やかさを今なお記憶している。同時に、わずかな出番しかなかったジャンヌ・モローの愛嬌ある容姿もよく記憶している。
 そのようなわけで、この訃報に際してもNHKが取り上げる以上は「NHK特集 ルーブル美術館」における印象深いジャンヌ・モローの映像を使用するのではないかと期待したが、少なくとも六時台の報道ではそのことに一言も触れられなかった模様。