ハケンの品格第五話

日本テレビ系。水曜ドラマ「ハケンの品格」。第五話。
脚本:中園ミホ。音楽:菅野祐悟。主題歌:中島美嘉「見えない星」(作詞作曲:長瀬弘樹&編曲:羽毛田丈史ソニー・ミュージック アソシエイテッドレコーズ)。プロデューサー:櫨山裕子&内山雅博。演出:茂山佳則。制作協力:オフィスクレッシェンド
小笠原繁(小松政夫)が事件の解決後に自ら身を退くだろうこと、嘱託の更新を自ら遠慮するだろうことは充分に予想された。彼は永い人生の大部分を会社のために捧げてきたのだ。それが単なる片想いだったと思い知らされては、潔く「老兵は消え去るのみ」と決意せざるを得なかったはずだ。しかるに大前春子(篠原涼子)は彼に対し云い渡した。「社員なら社員らしく、会社にしがみ付いてください」と。大前春子は決して、正社員よりも派遣社員の方が望ましいと信じているわけではないのだということをこれにより知り得よう。大前春子が「派遣社員は三ヶ月毎にリストラの恐怖を味わっている」と語ったのも意味深い。この「スーパー派遣」が三ヶ月間の契約を決して延長しようとしないのは、リストラの恐怖を自ら初めから防ぐためではないのか。ここに意外な弱さ=人間味を見なければならない。
正社員は己の身分に甘えることなく組織のため、少なくとも勤務時間中は休みなく最大限に働かなければならないが、しかし同時に、正社員は組織の一員である以上、組織を愛するとともに組織にも愛されるのでなければならないはずだ。派遣社員には遺憾ながらその権利はない。組織に愛されるべき存在ではないからだ。だから組織を愛する必要もない。大前春子はそのことを確と弁えて生きているが、それが理想の会社像であると信じているわけではないのだ。大前春子のそうした心理と論理をさり気なくも鮮やかに描き出した今宵の第五話は、これまでの五話中で最も面白かったと思う。
登場人物(出演者):スーパー派遣社員=大前春子(篠原涼子)。派遣社員=森美雪23歳(加藤あい)/食品会社S&F営業部マーケティング課主任=里中賢介30歳(小泉孝太郎)/S&F営業部販売二課主任=東海林武32歳(大泉洋)。S&F営業部マーケティング課(新入社員)=浅野務23歳(勝地涼)/S&F営業部販売二課=黒岩匡子30歳(板谷由夏)/人材派遣会社「ハケンライフ」マネージャー=一ツ木慎也30歳(安田顕)/タブラオ「カンタンテ」フラメンコギタリスト=天谷リュート20歳(城田優D-BOYS])/近耕作30歳(上地雄輔)島田香(入山法子)竹井瞳(清水由紀)。ナレーション(田口トモロヲ)。S&F営業部マーケティング課嘱託社員=小笠原繁62歳(小松政夫)。タブラオ「カンタンテ」ママ=天谷眉子58歳(白川由美)。S&F営業部長=霧島敏郎60歳(松方弘樹)。