ハケンの品格第十話

日本テレビ系。水曜ドラマ「ハケンの品格」。第十話=最終回。
脚本:中園ミホ。音楽:菅野祐悟。主題歌:中島美嘉「見えない星」(作詞作曲:長瀬弘樹&編曲:羽毛田丈史ソニー・ミュージック アソシエイテッドレコーズ)。プロデューサー:櫨山裕子&内山雅博。演出:南雲聖一。制作協力:オフィスクレッシェンド
大前春子(篠原涼子)が派遣契約の期間を決して延長しない理由は、半年も一年も一箇所に留まれば自ずから情が生まれて別れが辛くなるからだった。この真相を語ったのがあのマグロ解体師だったのは説得力がある。しかし気を付けなければならないのは、この真相が、派遣社員という制度の根本的に抱え込んでいる解決し得ない問題を改めて浮かび上がらせることだ。心優しい里中賢介(小泉孝太郎)が述べたように、確かに、正社員と派遣社員の身分の差を強調することは組織にとって有益ではないだろうし、あくまでも仕事そのものの成功に向けて正社員も派遣社員もともに力をあわせてゆくべきなのだろう。だが、たとえ派遣社員を正社員と対等に処遇しようとも、派遣社員はそのままでは本当の社員ではないという当たり前の問題が残される。東海林武(大泉洋)が常々語るような「家族」のような社員同士の結束の場から何時かは退場しなければならなくなるのが派遣社員というものなのだ。
ともあれ、会社が果たして「家族」のようであるべきなのか否かを抜きにしても何れにせよ、会社が仕事をするための場であるのは変わりない。左遷先の東海林武の許に現れた大前春子の言動はその点で一貫していた。S&Fの本社営業部から左遷されて輸送会社に出向していた東海林武は、自分以外に正社員の一人もいない逆境の中、乱暴な運転手たちの反抗に遭って苦戦していた。そこに颯爽と現れた大前春子は、懐かしのあの厳正な口調で己の卓越性を一通り主張した上で、東海林にも社長賞を取らせてやるために来たのだ!自分を雇ってくれたらトラック運転手と事務員の二人分の仕事をこなしてみせる!等と宣言して、早速トラックに乗り込み、配送先の福岡へ向けて走り出した。このドラマにおける恋の要素が最終回の最終の場でも恋の話のみに流れることなく、このように物語の主題としての、会社とは何か?社員とは何か?といった問題へ結ばれたのが実によかった。