マイケル・サンデル究極の選択

夜九時からNHK総合マイケル・サンデル究極の選択」を見た。提起された問題は(そして問題だけは)流石に鋭かった。
例えば、原子力発電所の事故の現場の最前線で命懸けの危険な作業に従事する者をどのように選抜するのか、その者に対して金銭等で報いるのは妥当であるのか?という問題。この問題は、(現実がどうであるかは全く知らないが、一つの仮想の話として)最も責任を負うべき者は安全地帯にありながらも充分な報酬を受けているのに対し、最も危険な現場にある者にはそれに相応しい報酬が与えられていないかもしれないという最悪の事態をも想像することによって、もっと深めることもできたのではないだろうか。また、原子力発電の危険性をなるべく小さくしながら原子力発電を今後ますます発展させるべきか、それとも、安全ではあり得ない原子力発電を止める代わりに原始的な生活へ回帰すべきだろうか?という選択は、もはや空想的な問題ではないかもしれない。
でも結局、震災後の日本人の礼節や連帯や勇気が、地球の裏側の人々にまでも「同じ人間として誇らしい」と感じさせ、多大の支援へ向かわせているという事実に基づき、本来グローバリズムとは対比されるものとしてのコミュニティというものの、グローバルな規模での、拡大や変容の可能性を見出したところで講義は結ばれた。確かに話としては綺麗だったが、できれば日本側の参加者の顔触れをもっと見直して、もっと時間をかけてでも、議論を深めて欲しかったと思う。