仮面ライダードライブ第八話

平成「仮面ライダー」第十六作「仮面ライダードライブ」。
第八話「その胸に宿る秘密とはなにか」。
仮面ライダードライブへの変身者であると同時に警視庁特状課巡査でもある泊進ノ介(竹内涼真)を、銃で撃とうとしていた死神チェイス上遠野太洸)。その瞬間、泊進ノ介を庇うべく両者の間に立ちはだかったのは詩島霧子(内田理央)だった。…というところで前回の第七話が終わっていた。第八話の冒頭はそこから始まった。
意外なことに、チェイスは詩島霧子を撃てなかった。なぜか。チェイス自身の言い分によれば、人間は撃つに値しないから。だが、これが本当の理由ではないのは、チェイスが一人で密かに「なぜだ?」と苦悩していた点から明白だろう。なぜ仮面ライダーに止めを刺さなかったのかをブレン(松島庄汰)から問われたときも明確には答えられなかった。ここには何かチェイスの秘密があるように見受ける。
意外な展開に苛立つブレンを宥めるように、首領ハート(蕨野友也)は「仮面ライダーを倒すこと。それが奴の宿命」と笑んでいたが、ここにもチェイスの秘密がありそうに思われる。ハートはブレンの知らないことを知っているらしい。
ともあれ、ブレンがスクーパーのロイミュードに期待していたロイミュードの新たな進化の方法は、今回、その全貌を明らかにしつつあった。東都タイムスのカメラマンの久坂俊介(永岡卓也)を悪事の相棒として利用し、久坂俊介のスクープ欲を煽ることで悪事への意志をも煽って、それによって力を得て進化を遂げたスクーパーは、最後、久坂俊介がスクープの種にすべく始末しようとした元来の相棒の東都タイムス記者の高杉憲太(内野謙太)と、それを庇おうとした詩島霧子とともに久坂俊介をも始末しようとすることによって、久坂俊介の絶望の感情を煽り、それを受けて最終の進化形態へ到達しようとしたのだ。
結局はその瞬間に仮面ライダードライブ=泊進ノ介が到着し、久坂俊介が絶望に至るのを阻止、併せてスクーパーの最終の進化をも阻止したわけだが、ともかくも、ロイミュードの新たな進化の方法は、少なくとも論としては明らかにされたと見ることができる。
今回の話には色々興味深い要素があった。
泊進ノ介の半年前までの「バディ」、早瀬明(滝口幸弘)は、泊進ノ介の新しい「バディ」、詩島霧子の出現を歓迎し、大いに喜んだ。泊進ノ介が詩島霧子をなかなか早瀬明に紹介しようとしなかったのは、早瀬明によれば、泊進ノ介の「過去の秘密」について早瀬明が詩島霧子に語るのを避けたかったからであるらしい。笑って語り得る程度の、しかも恥ずかしい過去であるらしい。気になる。
ドライブの新しい武器として「ドア銃」が登場したこと、その命名者が泊進ノ介で、「ハンドル剣」に続いて大胆な命名だったこと等も忘れ難いが、細かいところでは、久坂俊介が高層建築連続崩落事件で次々スクープ写真を撮るようになる直前の、最初に撮ったスクープ写真が、健康食品会社フォントアールの本社ビルの爆発事故だったという事実も見落とし難い。第五話と第六話の事件の舞台となった会社ではないか。この「事故」のスクープを機に、同社が危険な爆薬を扱っていたこと、それに絡んで警視庁公安部の一警察官と癒着していたことも暴露されたらしい。そしてそれが報じられたのは十一月十三日。なるほど久坂俊介が狂い始めたのは約二週間前のことであると判明する。
意外なことに、この事実を最初に掴んだのは(第六話における)泊進ノ介と警視庁特状課だったにもかかわらず、彼等の力では事件が解き明かされなかったらしい。単純に管轄外だからであると説明されるのかもしれないが、何か事情がありそうにも思われる。
このことは今回の事件にも関係してくるのだろうか。そもそも、高杉憲太と久坂俊介の間の友情が壊れたのは約一年前で、大手建設会社の不正を暴くべく追跡していたところ、どこからか新聞社の上層部への圧力があって彼等のスクープは妨害され、闇に葬り去られていた。警視庁特状課の調査によれば、事件の背後には当該建設会社と大物政治家との癒着があって、圧力はそこから来ていた。凄い事実だが、特状課のこの事実は、直ぐには警察を動かさないのかもしれない。
泊進ノ介の一寸頼りなさそうな上司、特状課長の本願寺純(片岡鶴太郎)は、高杉憲太から取材を受けた際、仮面ライダーについて聞かれて、「亀の子スープ?」と聞き返していた。既に仮面ライダーを二度も、しかし手と足だけを目撃したことのある警視庁捜査一課の警部補、追田現八郎(井俣太良)はそれを聞いて呆れていたが、本願寺純が同じ聞き間違いを二度も繰り返していたことは、これが単なる聞き間違いではない可能性を窺わせなくもない。意外に知っているのではないのか。
ところで、久坂俊介は高杉憲太から正気に返って欲しいと求められたとき、完全に開き直り、報道に必要なものは真実ではなく、事件とは作られるものであり、捏造こそが賞賛されるべきであると云い張った。報道における捏造が話題になっているときに、何と大胆な台詞だろうか。久坂俊介の尊敬する先輩の名が「吉田」であるというのも(高杉と久坂と同じく幕末の偉人の姓に因んでいることを別にすれば)、何とも大胆な設定ではないだろうか。