コマさん頑固ラーメン店/ケータの特技/負けそうな妖怪達

ニコニコ動画の「テレビ東京あにてれちゃんねる」(http://ch.nicovideo.jp/ch7)内の「妖怪ウォッチ」チャンネル(http://ch.nicovideo.jp/youkai-watch)で最新の第七十五話の配信あり。
今回は「コマさんが行く」の第二回のあとは、ケータ大活躍の話が二つ。
コマさんが行く第二回。
今回の対戦相手は、日本一美味のラーメン店「麺屋小二郎」の店主、塩ラーメン一筋五十年の職人ゲンさん。コマさんの脇には自称「ラーメン博士」ひろしが坐して、対戦を解説したが、結局、敗北したのは解説者の自称ラーメン博士だけだった。
ゲンさんにはどうやら妖怪の正体を見抜く力があり、しかもゲンさんにはヌイグルミのような愛らしさへの愛があったらしい。そのことを瞬時に表していたのは、店の前に並んで入店の順番を待っていたコマさんを見付けた直後の、ゲンさんの視線の角度。当然、コマさんは頭の上に木の葉を載せて人間に化けていた。コマさんの人間体は店の出入口のガラス面に写っていた。手間にはコマさんの正体があり、その奥のガラス面には人間体が見えていて、二つのコマさんの像が二重になっていたところに、このアニメ作品における演出のさり気ない巧さが表れていた。そしてそのとき、ゲンさんの視線の角度は人間体ではなく正体の高さへ向かっていた。
ちなみにコマさんが漫画家志望の若い女子に恋をする話(第21-24、26話「恋とポエムとコーヒーと」)で、コマさんが喫茶店内の窓際の席でその人に対面したとき、手前にはコマさんの人間体があり、窓ガラス面には正体が写っていた。この演出も巧かった。漫画家志望の若い女子は幼時に神社で狛犬の脇に立つコマさんを発見したことがあり、今もなお、コマさんの正体を確と見る力を有してはいるが、喫茶店で人間体のコマさんに対面していた間、その正体を見抜いてはいなかったから。
そう考えると、人間体に化けているコマさんを見てもなお、その正体を見抜いていたゲンさんの超能力は非凡であると云わざるを得ない。
妖怪トーシロザメ事件。
人々から特技をなくさせて笑いものにする妖怪、トーシロザメ。いかなる傑出した特技を持つ玄人をも、瞬時に素人(「トーシロ」)に転落させてしまい、それを皆に馬鹿にさせてしまうという恐ろしい力。玄人に特技をなくさせて焦らせるという面だけではなく、観衆の素人に玄人を嘲笑させて空虚な優越感を与えてしまうという面をも備えていて、そのゆえにこそ恐ろしい。オルテガの「大衆の反逆」のようなものだろう。
トーシロザメの所為で、ウィスパーは妖怪パッドの使い方を初歩から忘れ、ジバニャンは百烈肉球の動作を忘れてしまった。そして全ての視聴者が予想し期待していた通り、この妖力はケータには通用しなかった。なぜなら特技を持っていないから。ケータ自身は特技のつもりでも、周囲から見れば特技と呼べる域には達していない。このように云うとケータをかわいそうに感じないわけにはゆかないが、反面、ケータには不得意な分野も存在しない。何でも程々にはできてしまう。むしろ万能の天才ではなかろうか。
この話で面白いのは、トーシロザメについて調べるため妖怪パッドを颯爽と使いこなしていたときのウィスパーの姿が、話の冒頭の、大道芸人の颯爽とした姿と同じように描かれたこと。ウィスパーの妖怪パッド使いが既に、大道芸にも比肩し得る熟練の妙技に到達していることを見事に表した映像だった。
ケータが公園の階段を駆け下りるときの映像の躍動感も素晴らしかった。百烈肉球のやり方を忘れて、右手から動かすべきか左手から動かすべきか悩んでいたジバニャンの様子も愛らしかった。
妖怪しょうブシ事件。
さくら第一小学校五年二組の教室内で次々変な勝負が発生していた間、木村守(「マモル」)が微妙に映り込み続けていたのが先ずは面白かった。
次々様々な勝負に挑んでは常に負け続け、一度も勝ったことのない気の毒な妖怪しょうブシのため、ケータは勝負に負けてくれそうな妖怪を次々召喚。最初に、チョコボーで買収されて八百長に応じてくれそうなジバニャン。次に、決断力を欠いていてゴールキーパーなんか務まらなさそうな、ぎしんあん鬼。最後に、どこまでも運の悪そうなノガッパ、じんめん犬。
この第三回戦、しょうブシ敗退のあと、ジバニャンとノガッパと人面犬が何か楽しそうにしていたのは、残ったワサビ抜の寿司二つを三人で分けていたのだろうか。
しょうブシは今まで一度も勝ったことがないにもかかわらず、どういうわけか常に自信満々で、常に勝てる気でいて、負ける気がしないでいるのが面白い。この面白さに着目したのがウィスパーとケータで、ケータは解決策として、しょうブシに「リアクション芸人」として生きることを提案し、見事に成功させた。
こうして考えてみれば、実はトーシロザメ事件としょうブシ事件は表裏一体をなしている。トーシロザメは他人を落として笑いものにするが、しょうブシは自身を落として笑わせる。