漫画版-エンマ大王と5つの物語だニャン!

小学館てんとう虫コロコロコミックス、小西紀行作『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!EP5特別編』。面白かったが、USAピョンやウィスパー、コマさんの見せ場の多さに比較してジバニャンとフユニャンの影が薄いような気がしたかもしれない。しかし小西紀行の漫画「妖怪ウォッチ」の見所の一つはケータの英雄性にあり、それがここでも存分に表されていた。
漫画におけるケータは普段も、「普通」と云われながらも実際には到底「普通」という形容では片付けられない程に底抜けに心優しい器の大きさを見せ続けてきたが、昨年の映画「妖怪ウォッチ誕生の秘密だニャン」の漫画版では、怪魔を倒して妖怪ウォッチを取り戻すべく自ら決意してケマモト村へ一人で赴き、自ら勇敢に戦っていた。そのような勇ましさは、アニメにおけるケータには殆ど見られない。漫画版ならではのケータの英雄性であると云える。この英雄性が漫画「エンマ大王と5つの物語だニャン!EP5特別編」では冒頭に強烈に提示された。しかもそれこそが、途轍もない困難を解決するための殆ど唯一の希望だった。
映画ではそれがどのように描かれているのだろうか。大いに楽しみになってきている。
しかし思うに、アニメにおいても、「普通」であるはずのケータの特異性は時々表されてきていた。ぶようじん坊が全世界ぶようじん坊サマーフェスの会場に「さくら第一小学校」を選んだのは、そこがケータの通う学校だったから。あつガルル率いる「熱い系妖怪」の集会がケータの家で行われたのは、メラメライオンがケータの家を選んだから。USAピョンも、何百名もの妖怪を友達にしたケータの存在を、噂に聞いて知っていた。化け草履も、古典妖怪の同窓会でケータの噂を聞いて、自らケータに近付いてきた。ケータの評判はヒキコウモリを通じて、妖怪ウォッチUを開発した妖怪IT企業の覇者マーク・シャッチーバーグの耳にまで及んでいる可能性がある。なにしろケータこそは妖怪ウォッチを発明したケイゾウの孫に他ならない。今年の「妖怪紅白歌合戦」にケータが友情出演を果たしたことも見落とせない。
そう考えて見れば、妖魔界の頂点に立って全ての妖怪を制圧するエンマ大王がケータに特別な関心を抱き、自ら接近してきていたとしても不自然ではない。漫画版において最高に颯爽と格好よく描かれたエンマ大王が映画ではどのように描かれているのか。そこもまた大いに楽しみになっている。