仮面ライダーフォーゼ第十一話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第十一話「消・失・月・戸」。
仮面ライダー部の拠点でもある月面の基地へ通じる出入口は、天ノ川学園の構内の一校舎内の、遠い昔に廃部になっていたらしい課外活動の部室の中の、古いロッカーの戸の中にある。ロッカーの戸が月面の基地への戸に設定されたのは偶然の事故の結果であって、その偶然の事故が生じた瞬間は実は、歌星賢吾(高橋龍輝)と城島ユウキ(清水富美加)との出会いの瞬間でもあった。驚いたことに、今日の仮面ライダー部のそもそもの発端とも云える二つの出来事、両名の出会いと月面基地の出現という二つの出来事は同時に発生して因果性をも具えた一つの出来事でさえあったのだ。
この大切なロッカーが廃棄処分され、部室から撤去された。月面への通路が絶たれ、歌星賢吾がそこに取り残された。
仮面ライダー部の城島ユウキ、如月弦太朗(福士蒼汰)、風城美羽(坂田梨香子)、JK=ジェイク(土屋シオン)、大文字隼(冨森ジャスティン)、野座間友子(志保)の一同にとっては大切な友と永遠に引き離されてしまうのかもしれないばかりか、当の友である歌星賢吾は月面の基地に閉じ込められたまま孤独に耐えて生き続けなければならなくなるかもしれないのだ。
なお、蛇足を承知の上で敢えて付け加えておけば、ゾディアーツの退治を遂行する上では月面の基地へ行けなくなることも大きな損失であるはずだし、もう一つ、城島ユウキにとっては、友情の発端である思い出の場所が失われることの悲しみという面もあり得る。
天文部員のゾディアーツが、城島ユウキの依頼を受けてそのロッカーを探し出してみせた上で、己の片想いを断じて受け容れてくれそうもない城島ユウキの眼前で敢えて、そのロッカーを破壊してみせて、悲しませて復讐しようとした瞬間、不吉な予感から城島ユウキを見張って見守っていた如月弦太朗がそこへ駆け付けて仮面ライダーフォーゼに変身し、いつもの決め台詞「宇宙キター!」を叫んだが、このときも城島ユウキはいつものようにフォーゼと一緒になって「宇宙キター!」のポーズを取っていた。いつものことだが、いつもとは一味違うのは、そこにおいて守られるべきロッカーがあまりにも特別なものであるからだ。テレヴィ画面に、フォーゼよりも城島ユウキが目立つように映し出されていたことには説得力があった。