仮面ライダーディケイド第二十六話

東映仮面ライダーディケイド」。
第二十六話「RX!大ショッカー来襲」。脚本:米村正二。監督:金田治。
門矢士(井上正大)と小野寺ユウスケ(村井良大)と海東大樹(戸谷公人)の間の、病院の屋上での遣り取りは彼等の関係を改めて表した。
門矢士は、門矢士と一緒に戦おうとするユウスケを「足手まとい」と云って留守番を命じたが、それは実は入院中の「夏みかん」こと光夏海(森カンナ)を見守る役目をユウスケに委ねたいからだった。本当は門矢士自身が見守りたいに違いないが、「夏みかん」を助けるためには大ショッカー幹部アポロガイスト(川原和久)からパーフェクターを奪取しなければならないから、彼は戦いに出てゆかなければならなかった。門矢士が心にもなく「足手まとい」と馬鹿にしてまでもユウスケに留守番を命じたのは、恐らくはむしろ、己の思いを彼には託すことができると信じるからに他ならない。
海東大樹は、門矢士が「夏みかん」の生命を救おうとしていることに対して、邪魔をするつもりであることを宣言した。今まで門矢士に邪魔をされてきたことへの仕返しとして。この無意味な敵意に門矢士もユウスケも怒ったのは当然だが、果たして海東大樹のこの宣言に悪意のみを見るべきだろうか。無論そうは思えない。なぜなら門矢士とユウスケが「夏みかん」を救うための方法を発見することができたのは、海東大樹によるアポロガイストに関する情報提供の産物だからだ。もっとも、海東大樹が門矢士の邪魔をすることができるためには先ずは門矢士が動き出さなければならないわけだから、考えようによっては門矢士の邪魔をするだけのために門矢士に助け舟を出したに過ぎないとさえ見ることができる。実際、海東大樹=仮面ライダーディエンドは仮面ライダーディケイド=門矢士の戦いを卑劣な仕方で妨害した。海東が「通りすがりのコソドロ」でしかないことが、あの瞬間、明確に示されたとも見えた。でも、それが単純な敵意と悪意に発した行為ではないのは、「コソドロ」としての彼が、「夏みかん」危篤への悲しみのゆえに何時になく隙だらけだった門矢士から容易く盗み出すことのできたディケイドライバーを、「勝負はフェアでないとね」と云って直ぐに返却したことから明らかだ。
海東大樹は門矢士と自身とをライヴァル関係と考えている。そして門矢士の側にいるユウスケを、門矢士と己とのライヴァル関係を乱す無用の邪魔者として軽蔑していると見受ける。ユウスケを軽くあしらおうとする点では門矢士も同じで、特に今回は、海東による馬鹿にしたような扱いの直後に門矢士による「足手まとい」発言が続いた所為で流石のユウスケも傷付き苛立ったようだったが、もちろん門矢士の本心は違う。ユウスケが最もよく知る通りだ。
それにしても、仮面ライダーBLACK RXに変身する際の南光太郎倉田てつを)の動作(所謂「変身ポーズ」)は、平成の仮面ライダーでは殆ど見ることのないかと思われる非常に確りした所作だった。予言者の鳴滝(奥田達士)は今週も絶好調。夏みかんが瀕死の状態にあるのはディケイドの所為!ユウスケもディケイドに係われば何れ同じようになる!門矢士自身も同じようになる!と脅して消えた。鳴滝が門矢士とディケイドを区別するのは珍しい。