日帰旅行記/高松市立美術館の鏑木清方展で徳川慶喜を鑑賞/梶裕貴twitterでマギ終了を知る

 休日。しかも夏のような快晴。ゆえに再び夏の格好。
 本当は家で存分に休んでいたかったが、どうしても今日中に行っておきたい場所があったので思案の末に十一時前に急ぎ外出。タクシーでJR松山駅へ急行し、特急列車に飛び乗り、一時五十五分頃に高松駅へ到着。実に立派な駅ではあるが、奇妙なことに、駅の周辺ではインターネット接続が困難で、駅を離れた途端に接続が容易になる。初夏に来たときもそうだったが、今日もそうだった。立派な駅であるのに、何故だろうか。
 携帯電話の地図を見ながら歩き、兵庫町のアーケイド商店街へ入って、まるで聖堂のようなドーム型の壮麗な空間を眺めたあと、今回の目的地である高松市立美術館へ。
 高松市立美術館では「鏑木清方展」を今月十五日まで開催している。開幕前から楽しみにしていたのに、観に来ること叶わなかった間に早くも間もなく閉幕してしまうので、何としても今日中に観ておきたかった。
 明治、大正、昭和それぞれの時期の趣味の変化や画家自身の円熟の度合いを伝える多様な美人画を存分に鑑賞できたが、一番の見所をなしたのは全会場の最後の空間に展示された名作「慶喜恭順」。官軍に対して心から恭順の意を表している徳川慶喜の物静かな姿を端正に描いている。近代の美人画における最高峰「築地明石町」が今や幻の名品と化してしまっている中、鏑木清方の傑作といえば重要文化財三遊亭円朝像」と、この「慶喜恭順」であると云える。美人画の巨匠と云われる人の最高傑作が実は男性像であるというのも面白い。ともかくも「慶喜恭順」を存分に観ることができて大いに満足した。鑑賞後にはグッズ売場で絵葉書四枚と、清方絵の双六の復刻版と、名品図録を購入。併せて清方記念館図録十六冊セットも注文しておいた。十日後には配達してくれるらしい。
 二階から一階へ降りて、高松市立美術館の常設展も鑑賞したあと、館内カフェで休憩。ケーキセットを注文。ベルギーチョコレイトのケーキで、濃厚で美味だった。
 カフェの横の売店にあるチラシの棚を眺めれば東京都台東区にある朝倉彫塑館の「猫百態」のチラシがあった。何と素晴らしい展覧会だろうか。朝倉文夫の彫刻はリアリズムを基本としているが、その厳しい観察眼と迫真の描写力は猫の本当の愛らしさを見事に表し尽くしてしまう。朝倉文雄自身は無類の愛猫家だったが、猫の造形にあたっては猫を敢えて愛らしく表現するのではなく、猫の姿形そのものを捉えている。しかるにそうすることで却って、猫が具える本来の愛らしさ、美しさを最も鋭く、深く造形化し得ている。それを存分に鑑賞できる展覧会というのは、実に待望の企画であると云わなければならない。行きたい。
 閉館時刻にあたる夕方五時の少し前に高松市立美術館を出て、商店街から三越の前を通って高松城の手前に出た。琴平電鉄(琴電)の線路の向こう側に高松城の堀と石垣があり、櫓が木の陰に隠れてしまう角度からの眺め。櫓の奥には香川県立ミュージアムが見える。堀には海水が流れていて、海辺に来た気分。もっと早い時刻に来ていたなら香川県立ミュージアムにも寄りたかったが、生憎、既に閉館時刻の五時を過ぎていた。
 五時十七分頃、高松駅に帰着。指定席の券を買い、五時五十分に出立。夜八時半に松山駅へ着き、市内電車で道後まで戻り、大型食料品店に寄って帰宅。その間、twitterを眺めていたところ、梶裕貴大高忍の漫画「マギ」の連載終了について原作者の労を労っているのを読んだ。なるほど、終わったのか。どのような終わり方をしたのかを単行本で見届けよう。