富豪刑事

テレビ朝日系-木曜ドラマ「富豪刑事」。筒井康隆原作。福田卓郎脚本。長江俊和演出。深田恭子主演。第五話。
面白かった。笑える要素の連続だったが、その代表例としては最後の謎解きの場における「OK牧場」を挙げてよいだろう。
富豪刑事の美和子(深田恭子)の見事な推理によって、竜神会の組長の福本(細川俊之)を殺害した真犯人が当初から疑われていた不知火組の組長の水野(寺田農)ではなく、竜神会の若頭の新谷(ガッツ石松)であると判明し、焼畑警察署捜査課の皆で新谷を取り囲み追い詰めた場面。「新谷さん、あなたが犯人ですね?新谷さん。それでよろしいですね?」と聞いた美和子に、新谷は「OK牧場」と応えたのだ。真剣な場面でのこの突然のヴォケには驚愕した。
そのあと美和子の繰り広げた説教も凄かった。新谷を無理矢理「本当は良い人」に仕立て上げて事件を美化しようとする美和子に、新谷は「何云ってんだ?この女」「何云ってんだ!俺は悪人だ!」と反発したが、それでも動じることなく美和子は「本当の悪人は自分を悪いとは云わないものです」と切り返し「やっぱりあなたは優しくて良い人なんですよ」と一人で勝手に納得した。
今回は焼畑警察署刑事課長の鎌倉警部(山下真司)のライヴァルとして、神奈川県警察本部四課長の大橋警部(大和田紳也)が新たに登場した。絵に描いたような嫌味なキザ男。演じる大和田紳也がそれを貫禄充分に演じていたのがよかった。
鎌倉警部が大橋警部に負けそうになったとき、部下の鶴岡刑事(升毅)・狐塚刑事(相島一之)・猿渡刑事(鈴木一真)は大橋警部の味方に付いて鎌倉警部を裏切ったが、もちろん美和子だけはそうした党派性には無縁なので裏切ることはなく、何時ものように鎌倉警部のため重要な意見を提出した。鎌倉警部は嬉しそうだった。
なお、西島刑事(載寧龍二)は見積と電卓の名人だったらしい。布引刑事(寺島進)がヤクザ以上にヤクザ風だったのは予想通りで面白かった。猿渡刑事が疑われて、またも混乱していたのも見どころの一つだった。猿渡刑事は何時も困っている。日本語を解さないと見られた米国の大富豪ジョーダン(ランディ・ゴインズ)が逮捕された瞬間「万事休す」と呟いたのも傑作だったし、鎌倉警部と大橋警部との間の「犯人はジョーダンだ」「じょ、冗談じゃない!」「いいや、ジョーダンだ!」「冗談じゃない!」の応酬も馬鹿馬鹿しくて軽く笑えた。事件を解決した美和子を迎えに来た神戸喜久右衛門家の使用人、運転手の伊東隆行(虎牙光輝)を見て、新谷が「誰だ?お前は」と驚いていたのもよい表情だった。