エンジン

フジテレビ系「月九」ドラマ「エンジン」。木村拓哉=キムタク主演。井上由美子脚本。第二話。
不思議だ。月九ドラマの、しかもキムタク劇場なのに面白い。
何故か面白いのは、一つには、キムタクの尊大な態度が周囲に殆ど通用していないからだ。彼の演じる主人公、神崎次郎は数年前にはレーサーとして活躍していたらしいが、今は活動休止を余儀なくされていて、世間には既に引退したと思われてしまい、「終わっている」とまで云われてしまう有様だ。当然、彼がどんなに強気な姿勢に出ても世間には相手にしてもらえない。育ての父と姉、神崎猛(原田芳雄)と神崎ちひろ(松下由樹)の経営する養護施設「風の丘」に帰宅すれば、当然、まだまだ子ども扱いをされてしまう。父子・姉弟の関係において「子ども」は三十歳を過ぎても子ども、弟は三十歳を過ぎても弟でしかない。
養護施設「風の丘」に居住する大勢の子どもたちの多くは既に、新たに同居人になった奇妙な兄貴としての、神崎次郎に興味を抱いているようだ。当然だろう。今まで見たこともない程に柄の悪い男で、しかもなかなかの美男子なのだ。興味を抱かないはずがない。でも、それだから神崎次郎に皆が従うかといえば無論そうはならない。あくまでも主導権は(少なくとも現時点では)子どもたちの側にあり、彼は半ば子どもたちに弄ばれているだけなのだ。
主人公と周囲との関係は、基本的には以上のように設定されてある。そうであるからこそ、神崎次郎の独特なレーサー論が星野美冴(上野樹里)の心を少しだけ和らげて動かして説得した過程の面白さは、逆転劇を含んでいることによってなおのこと際立つのであると思う。
鳥居元一郎(堺雅人)は今のところ常に正しい。水越朋美(小雪)よりは妥当なことを云っている。豊富な経験に基づいた彼の冷静な言動は、神崎次郎の型破りな指導力と競合しない限り否定されはしないだろうが、無論ドラマが両名の対立を出来しないはずがない。楽しみにしておこう。牛久保瑛子(高島礼子)の存在感もドラマの見所の一つだろう。なお、今回はキムタクによるホリ風「ちょっまてよ!」台詞を聞くことができた。キムタクは実にホリの物真似が上手い。天才的な名人芸だ。