瑠璃の島

日本テレビ系-土曜ドラマ瑠璃の島」。第四話。
那覇の小学生五人が鳩海島に来て一泊二日の共同学習に参加した。鳩海島の側には那覇の都会人たちに対して鳩海島の存在感を示すことが事業を企画した目的としてあり、従って那覇からの五人は島の人々にとっては大事な客人だ。このことは直ちに、那覇の小学生たちと鳩海島の住人たちとの間に一種の上下関係を生じてしまう。しかるにそのような無用の身分の差がドラマを生じないはずがない。那覇から来た小学六年生の哲平(桜田通)と鳩海島に移住した藤沢瑠璃(成海璃子)との間の対立を生じたのは基本的には哲平の側の一方的な苛立ちであり、それは彼の生まれ故郷の鳩海島への複雑な想いであって、そして関連して、藤沢瑠璃が東京出身の本物の都会人であることに対しても彼には恐らくは嫉妬があって瑠璃へのあのような嫌がらせに走ったわけだから、要するに事件の発端はどこまでも哲平の内面の問題だったわけだが、それを無用に激化させた要因としては鳩海島に急に作り出された身分の差があったのは明白だ。その意味で、鳩海島の自治会長の新垣治衛(平泉成)や自治副会長の宮園壮平(塩見三省)が哲平を贔屓していることに対し、瑠璃を「娘」として迎えた鳩海島の民宿の主人、仲間勇造(緒方拳)が怒ったのは正しかった。そして小学校教師の島袋さなえ(小西真奈美)が唯一、瑠璃を庇ったのは、もちろん先週放送の第三話における改心からの延長上にある事態でもあるが、むしろそれ以上に、教育者としての厳正な正義感を貫いての行動だったと云うべきだろう。
それにしても斉藤茂(賀集利樹)と中嶋美月(井川遥)の二人組の関係は今後どう進展してゆくのだろうか。中嶋美月が幾度も気分悪そうにしていたのは誰がどう見ても妊娠の兆候だろうが、斉藤茂がそんなことにも気付かないのは、彼の致命的なまでの鈍感さ加減に加えて、恋人に対する彼の愛情の欠如と無関心を物語っていよう。だが、恋人に対して愛情を欠いているとは何事だろうか。ここに彼の人間性の問題がある。彼の軽さは川島達也(竹野内豊)への敵対心の表出によっても強調されたが、そもそも賀集利樹は駄目な男を演じるのが実に上手い。駄目な男にも色々な「駄目」があるわけで、NHK大河ドラマ義経」で彼の好演する平維盛の場合、人柄もよく能力もあるものの若くて人望がなくて周囲に流されて失敗するのだから、駄目男というよりは悲劇の貴公子の性格が強い。賀集利樹は単なる駄目男と悲劇の駄目男との二種をそれぞれ好演している。