タイガー&ドラゴン

TBS系ドラマ「タイガー&ドラゴン」。宮藤官九郎脚本。長瀬智也主演。第九話「粗忽長屋」。
何と云うか、面白かった。第九話の全体を支配した重苦しい残虐性が、第九話の全体に散りばめられた軽い笑いと不調和を来たしながら調和して、笑えない笑いを絶妙に生じた。もっとも、あのような暴力的な展開を嫌う人々が少なくないことは承知している。例えば「木更津キャッツアイ」第三話における暴力なども放送当時は賛否両論を惹起したものだった。だが、宮藤官九郎脚本ドラマの妙味の一つは救いのない残酷性にあると云うべきではないだろうか。能天気に見えた「ぼくの魔法使い」にしても、冷静に考えれば実に残酷な物語ではないか。さらに云うなら、そもそも落語の世界もそうしたものではないだろうか。
ヤクザ噺家の林屋亭小虎=山崎虎児(長瀬智也)を贔屓にしている蕎麦店主人の辰夫(尾美としのり)・おでん屋台の半蔵(半海一晃)・喫茶店『よしこ』ママ(松本じゅん)の三人組をはじめ、常連客たちは皆、小虎の「バイオレンス」に富んだ「粗忽長屋」を存分に楽しんだ。「フィクション」と前提してのことではある。小虎自身が、噺を始めるにあたり、今回のは「フィクション」であるので勘違いしないように!と宣言したのだ。客たちがそれをそのまま素直に信じたのかどうか、実は「ノンフィクション」ではないかと疑わなかったかどうか知らないが、或いは、疑うなどは「野暮」であると彼らは応えるかもしれない。