瑠璃の島

日本テレビ系-土曜ドラマ瑠璃の島」。第十話=最終回。二十分延長の拡大版。
よい最終回だった。盛り沢山の内容で、急ぎ足の展開ではあったが、山積していた問題は一通り解決されて、気分よく終結を見た。物語の全体を支配し導いた鳩海島における小学校の存続と中学校の再興の問題が余りにも一気に解決されたのには少々驚いたものの、決して無理がなかったどころか、むしろ自然でさえあった。あの、鳩海島「里子」募集の件について取材に来た都会のジャーナリスト野々村(高杉亘)が「島民のエゴ」への批判的な思い込みを自ら乗り越えて逆に実際の里子三人、藤沢瑠璃(成海璃子)と「いっちゃん」=いずみ(永井杏)と暁(内田流果)の幸福な姿をそのまま雑誌の記事にしたことで、かつて瑠璃の預けられていた東京の養護施設の他の子どもたち数名がその記事を見て島への移住を希望したのだ。
瑠璃が里親の仲間勇造(緒形拳)・仲間恵(倍賞美津子)夫妻の高齢のことを心配したことは鳩海中学校の再興や実母の藤沢直(西田尚美)との関係に関する話に結び付いて物語を盛り上げたが、単にドラマに吹き荒れた最後の嵐というだけにはとどまらない。まだ十歳代の子を高齢の親がどのように育てるのか?というのは普通に難しい問題だが、しかも仲間勇造の場合、民宿を営んでいるから定年退職がないとはいえ島に来る観光客が少ない中で宿泊客は少ないし、漁師であるから定年退職がないとはいえ体力や筋力を失えば仕事にはならないし、何れにせよ収入が乏しい。育ち盛りの十歳代の少女がそんな家庭で幸福に生きてゆくためには、都会の学校に進学するとか都会の流行風俗を真似るとかの、普通の少女たちの享受する欲望の多くを基本的には捨て去って、あくまでも島の生活に固有の幸福だけを求めてゆくのでなければならない。今宵の最終回は、瑠璃が確かにそのことを理解した上で、それでもなお島民として生きてゆきたい考えであることを表明した話だったと評してよいのかもしれない。都会を捨てて島に来た瑠璃は、小学校教師から転じて新たに再興された中学校に「赴任」した島袋さなえ(小西真奈美)とともに平穏に学校生活を続けながら、暇を見ては「お父さん」仲間勇造の仕事を手伝って、島の女として力強く生きてゆくことだろう。
島を離れることを決意した「川島達也」=高原信(竹野内豊)の出発のとき。松隈浩二(勝村政信)と斉藤茂(賀集利樹)が海に飛び込んでいた。二人がNHK大河ドラマ義経」ではそれぞれ灯篭大臣平重盛平維盛を演じていたのは今さら云うまでもないが、「瑠璃の島」での両名と「義経」での両名は何れも別人に見える。賀集利樹は「仮面ライダーアギト」主演の頃は当世風の派手な陸サーファーだったが、「はぐれ刑事」等に出演した頃には地味で真面目な感じの人になっていて、そして以後もそのまま活動し続けていた。それが「瑠璃の島」における彼はアギト翔一時代の偽サーファー姿を想起させるわけだから、見事な若返りであると云える。