義経第35話

NHK大河ドラマ義経」。滝沢秀明主演。第三十五話。
元暦二年(1185)壇ノ浦合戦。見所は新中納言平知盛阿部寛)の凄絶な死闘に尽きる。あの必死の形相は、日本画の巨匠、前田青邨の傑作「知盛幻生」における怨霊の眼差しを想起させた。先帝身投の直前の、新中納言知盛卿の突然の大掃除と「めづらしきあづま男をこそ御らんぜられ候はんずらめ」のブラックジョークの場面がなかったのは残念だが、あの軽そうな岩の衝撃に比べれば大した問題ではない。
なお、以前ここで平能子役の後藤真希について酷評したことがあったが、今その言を撤回しておく。建礼門院中越典子)・洞院局領子(かとうかずこ)・治部卿局明子(夏川結衣)・大納言典侍輔子(戸田菜穂)の入水は哀しく痛ましかった。二位殿(松坂慶子)の最期は四月三日放送の第十三話における源三位入道頼政丹波哲郎)の不敵の笑みを超えたと云うも過言ではない。このように美点は幾つか見出せたとはいえ全体としては軽そうな岩に象徴されるような見るに耐えない部分が目立った。故に、新中納言知盛卿の凄絶な死闘のみが唯一の見所だったと結論付けざるを得ない。