がんばっていきまっしょい第9話

フジテレビ系ドラマ「がんばっていきまっしょい」。敷村良子原作。金子ありさ脚本。南雲聖一演出。鈴木杏主演。第九艇。
今宵のMVPは文句なく朝食の場における篠村幸雄(大杉漣)だろう。第57回全国高等学校ボート競技選手権「日の出レガッタ」出場を断念した悦ネエ=篠村悦子(鈴木杏)が、朝、この全国大会のため琵琶湖へ向かっているはずのリー=矢野利絵(相武紗季)、ダッコ=菊池多恵子(岩佐真悠子)、ヒメ=中崎敦子(佐津川愛美)、イモッチ=中浦真由美(藤本静)のことを色々心配し、楽しかった三年間の日々を想起して泣き出した姿にも惹き込まれたが、それに対して悦ネエの父、篠村幸雄が怒りながらも三年間の娘の大奮闘を讃え、激励して自家用車で琵琶湖へ連れてゆくことを決定し急遽ともに出発した急展開は、予想通りだったとはいえ実に観者を熱くした。予想通りというよりは期待通りだったのだ。そして期待を超えていた。
悦ネエが砂の小瓶と四人の寄せ書きを捨てたのは痛々しいが、共感は充分できる。一生の思い出にさえなるはずの大切なものを一時の感情に任せて勢いで否定し去り捨て去ってしまうのは、高校生の年齢ではよくあることだと思う。あの年齢の頃、人は驚く程に過激で極端なものなのだ。
SABUちゃん=中田三郎(田口淳之介)が図書館で悦ネエにカメラを渡したときの表情は柔らかくサワヤカで実によかった。ブー=関野浩之(錦戸亮)の迫力は何時も通りだが、今回はブーよりも中田三郎の方が光って見えた。中田三郎がさりげなくブーを勝手に付けた「セッキー」の愛称で呼んでブーが瞬時に反応して「セッキー云うな!」と反発する場面は今回もあった。
松山第一高等学校男子ボート部の五人衆、安田恭一(北条隆博)・雨谷光太郎(滝直希)・窪田啓司(田中琢磨)・大塚秀明(三田村瞬)・酒井仁(福山一樹)は先週放送の第八艇で高校を卒業したが、まだまだボート部OBとしての出番があったようだ。ここでも期待を裏切らないドラマだ。