ドラゴン桜最終回

TBS金曜ドラマドラゴン桜」。阿部寛主演。三田紀房原作。秦建日子脚本。塚本連平演出。制作MMJ&TBS。第十一話=最終回「お前らはもうバカじゃない!運命の合格発表」。
龍山高等学校「特進クラス」の主宰、桜木建二(阿部寛)が「知らないということは実に恐ろしい」と述べたのは八月十二日放送の第六話でのことだった。この言は今、桜木にとって名実ともに一番の生徒である矢島雄介(山下智久)の精神となった。彼の父は借金に関する法律等一切を知らなかったことで工場を手放さざるを得なくなったのだった。彼は今この不幸の真の意味を理解し、家族を見捨てた父の無念をも恐らくは理解した上で、それでもなお自分を励まし続けてくれた母(石野真子)に楽をさせてやるため、学費を節約するため合格した東大への進学を敢えて断念し、独学で司法試験合格を目指すことにしたのだ。多分それは桜木のかつて歩んだ道でもあったろう。
偏差値三十の龍山高校に通う奥野一郎(中尾明慶)と、屈指の進学校である秀明館高等学校に通う奥野次郎(水谷百輔)の双子にも最後の嵐が吹き荒れた。両親の期待を一身に集めていた次郎は、全く期待されていなかった一郎の追い上げに焦りを感じていたらしく、一郎に打撃を与えるため、二次試験の初日のあと、賞味期限の十日以上も切れたサンドウィッチを一郎に食わせたのだ。優等生として生きることを周囲に期待されながらも実質を伴い得ないために苦悩する者にありがちな卑屈、卑劣の挙であると云うべきだろう。一流大学理学系大学院の助手にその種の犯罪者がいたと聞く。ともあれ、このような者に相応の天罰を与えるのは喜劇的ドラマ詩学の要請するところに他ならない。次郎は東大に落ちて一郎は合格した。当然だろう。
香坂よしの(新垣結衣)も東大に合格。もともとは交際していた矢島雄介と一緒にいたくて「特進クラス」に入ったのだったが、今や恋愛よりも「知る」ことの喜びに生きることを選択するに至った。緒方英喜(小池徹平)と小林麻紀(サエコ)は不合格だったが、もちろん諦めはしなかった。英語教諭の井野真々子(長谷川京子)に招かれて「特進クラス」の講師をつとめ、高校生たちに教えながら自らも勉強することにしたのだ。水野直美(長澤まさみ)もまた入院中の母(美保純)を毎日のように見舞い、母の店を代わりに守りながらも再びの受験に備えて勉強を再開した。矢島雄介が夜には工事現場で肉体労働に励みつつも昼には家で司法試験の準備を始めたように。
桜木健二が自ら立ち上げた龍山高校「特進クラス」を公約通り去り、「特進クラス」各教科の特別講師オールスターズの芥山龍三郎(寺田農)・川口洋(金田明夫)・阿院修太郎(小林すすむ)・柳鉄之介(品川徹)が去ったあとは井野真々子が主宰を継承したが、他方、かつて桜木に反抗し続けた教諭たちは今や桜木の物真似を始めた有様。ことに最も強硬な反対派だった落合正直(デビット伊東)は桜木の外見を見事に模倣していた。ちなみにデビット伊東阿部寛の形姿を見事に真似たのは二〇〇三年十二月放送の仲間由紀恵主演「トリック」episode5に続いて二度目だろうか。