仮面ライダー響鬼37巻

テレビ朝日系“スーパーヒーロータイム”ドラマ「仮面ライダー響鬼」。細川茂樹主演。三十七之巻「甦る雷」。
この物語における正義の味方が「鬼」であることの意義は今こそ見えてきたと云うべきだ。ありもしない陰陽道の論などを必死に見出そうとしても仕方がない。薄かったものを厚く深かったかのように信じ込んでも仕方がない。作品外の知見への拘泥に起因する無理矢理な読みが作品世界からの無残な乖離を来たすのは、現代のまともな知にとっては、例えば前世紀前半のイコノロジーの類で経験済みではないか。それよりはむしろ、鬼というものが恐ろしいものであるという御伽噺の類における基本を踏まえた上で、恐ろしい鬼の力が正義のための手段として制御されていることの意外性をこそ見なければならない。初歩的な話だが、初歩が疎かになっては話にもならない。実に先週から今週にかけての朱鬼=シュキ(片岡礼子)の出現は「響鬼」物語の基本設定におけるそうした二律背反を鮮やかに浮かび上がらせた。そして「鬼であるためには鬼であってはならない」のテーゼが持ち上がったのだ。
ところで、一つの意外な事実が明らかになった。「少年」=安達明日夢栩原楽人)は目下の悩み事について桐矢京介(D-BOYS中村優一)に相談したらしいのだ。ヒビキ(細川茂樹)の発した「鬼であるためには鬼であってはならない」という謎めいた言について深く考え込んでしまっていることを明日夢は桐矢に明かし、桐矢からは当然のように冷ややかに「からかわれたんだよ、君は」と言い返されてしまったわけだが、それにしても明日夢は桐矢に対して何と心を開いていることだろうか。あたかも友人以上であるかのように深い関係にありながら現実には友人に到底なれそうもないとは、なかなか複雑で面白い関係ではある。
明日夢と桐矢を結び付けるものが「ヒビキ」への関心にあるとすれば、桐矢の「俺は何れヒビキさんの弟子になる!」宣言は決定的に両名の競合関係を熱くするだろう。明日夢の「成長物語」も本題に入り始めたということだ。