anego[アネゴ]Special

日本テレビ系ドラマ「anego[アネゴ]Special」。林真理子原作。中園ミホ脚本。プロデューサー櫨山裕子&内山雅博。制作協力オフィスクレッシェンド吉野洋演出。篠原涼子主演。赤西仁戸田菜穂助演。
二時間九分間の番組だったが、その大半は今年の四月から三ヶ月間にわたり放送された「anego・アネゴ」物語を懐想しつつ、描かれなかった部分を描き、その意味を再確認する内容だった。確かにあのドラマには所々謎めいた展開があって必ずしも解り易くはなかったが、私見ではそこに必然性を見出すのは難しくはなかった。その私見については放送当時に既に書いたので繰り返さないが、あの複雑で緊張感に満ちた心理のドラマを今宵のこの番組を通して想起することができて懐かしく面白かった。
さて、今宵の特別篇では「その後」の話として、主人公「アネゴ」=野田奈央子(篠原涼子)の新たな恋人が登場した。医師の望月(吉田栄作)という年上の男。開業医の令息で、現在は大病院に勤務中。黒沢明彦(赤西仁)の恋敵になるかと思われたが、そうはならなかった。望月は大度量の男だったようだ。奈央子にとっての幸福が、自分との結婚によりはむしろ黒沢との恋にこそあるだろう気配を敏感に察して、自ら奈央子を捨てたのだ。この冷徹な判断は奈央子への彼の想いの深さを逆に表出していると見るべきだろう。他方、奈央子と黒沢との関係は燃え上がるかと思わせて結局またしても微妙な地点に留まってしまった。これには現実味がある。何故なら一般に、長期間の不在は潜在する愛を顕在化させるが、当の相手が現在するや愛は再び潜伏するものだからだ。