喰いタンKUI-TAN第二話

日本テレビ土曜ドラマ喰いタンKUI-TAN」。寺沢大介原作。伴一彦脚本。小西康陽音楽。主題歌=B'z「結晶」。次屋尚&山本由緒プロデューサー。和田豊彦&井下倫子協力プロデューサー。アベクカンパニー制作協力。中島悟演出。東山紀之主演。第二話「中華街を食い尽くす」。
こんな底抜けの馬鹿ドラマがこんなにも感動的であることに驚いている。ことに後半の速度感は凄かった。遊園地の大捕り物では、被害者の遺児として犯人側より運び屋に指名されたヤン(長澤秀平)を事実上オトリにして正体不明の敵に警戒する神奈川県警察本部横浜みなと警察署の捜査員たちの混乱する様子が見ものだった。緊張度を高める現場。その動きを司令室のテレヴィで見守る緒方桃警部(京野ことみ)と山内崇署長(伊東四郎)の不安、焦燥。舞い上がって見当違いな方向に暴走してしまっていた五十嵐修稔刑事(佐野史郎)。異様なまでの緊迫感、手に汗握る興奮がありながらも笑い所が満載で完全にドラマ世界に引き込まれた。
遊園地で大捕り物が展開されていたのと同じ頃、一軒の料理店でも死闘が繰り広げられていたのだ。金田一少年=かねだはじめ少年(須賀健太)の身代わりに人質にされていた野田涼介(森田剛)。救出に来た食いしん坊の探偵「KUI-TAN」こと高野聖也(東山紀之)。彼を返り討ちにするため包丁を構えて近寄った犯人を背後から鍋で打ちのめした出水京子(市川実日子)。金色の箸を取り出して華麗な殺陣を披露した喰いタン聖也!箸と包丁との闘い!不覚にも手を離れた箸!丸腰と武装!調味料で攻撃!最後には京子の鍋!箸と調味料と鍋で勝利したホームズ・エージェンシーの鮮やかな連繋が馬鹿馬鹿しくて笑えて、それでいて最高にカッコよかった。
金田一少年に対する野田涼介の説教と絶叫も一々よかった。素晴らしい友情論を説きながらも彼の「メロス」論には押し付けがましい打算性が見え透いていて、あからさまに小物な感じがあるのがむしろ清々しくもあった。金田一が何度「かねだはじめ」だと強調しても「きんだいち」と呼び続けた野田涼介。でも「じっちゃんの名にかけて」メロスのように俺を助けに来い!と絶叫した瞬間の彼の真剣な眼差し。ここでも笑い所の連発の只中、人間の弱さ、哀しみが覗き見えるのだ。
金田一少年がゴミ箱に捨てた豪華な弁当を直ぐに拾い上げ、少年の頭を殴り、「食べ物を粗末にするな!」と叱った喰いタン聖也の美声には迫力が満ちていた。このドラマは底抜けの馬鹿ドラマではあるが、同時に、食うことの素晴らしさを説く一種の美味礼賛、美味学でもあるのだろう。今期最高傑作になりそうな予感。