夜王YAOH第五話

TBS金曜ドラマ「夜王YAOH」。倉科遼井上紀良原作(作&画)。渡辺啓渡辺慶)脚本。主題歌=TOKIO「Mr.Traveling Man」。ホスト監修=零士&大内基。貴島誠一郎チーフプロデューサー。加藤章一プロデューサー。倉貫健二郎演出。ドリマックス・テレビジョン&TBS製作。松岡昌宏主演。第五話。
ホストの世界における争闘を語るとき、人は主にホスト側のNo.1競争にのみ注目する。しかしNo.1ホストの地位が大口の客の存在によって支えられる以上、客の側にもまたNo.1競争があるのは容易に想像される。新宿歌舞伎町ホストクラブ「ロミオ」のNo.1聖也(北村一輝)をまさしくNo.1ホストに育て上げた女、画廊主の津田綾子(古手川祐子)が見せた他の客との意地の張り合いがそれを物語る。一人の男をNo.1ホストに育て上げた客であること、そのような客として語られ、見られること。それは客としてNo.1であることの証明であり、No.1の客であることによって客は幸福を享受できるのだ。大口の客であることの「見返り」はそこにこそあるのだろうと思う。
今回、的場遼介(松岡昌宏)は恩人の加納麗美(かたせ梨乃)が不治の病であることを知らされ、立ち直れない程に落ち込んだ。立ち直る契機は、聖也にとっての津田綾子が遼介にとっての麗美のような存在であることを知り、津田綾子の画廊の倒産に伴い聖也がこの大恩人を見捨てたのを知ったことで怒り、改めて闘志を燃やしたことにあった。単純明快ながらも類比的構造性を備えた物語で、しかも熱い。今宵の脚本家は再び渡辺啓。かつてグレートチキンパワーズグレチキ渡辺慶だった男。彼の書く脚本は意外に熱い。
遼介の麗美への熱い思いを知ったことで修(要潤)と夏輝(石垣佑磨)と金四郎(佐藤二朗)は遼介派としての結束を固めた。これまた熱い。他方、凍て付く程に冷たいのが聖也派の連中だが、面白いのはNo.4の光(忍成修吾)が聖也の姿勢に全く疑問を抱かないのに対し、No.2の蓮(須賀貴匡)が、忠実な手下として行動しつつも、疑問を全く抱かないわけでもなさそうであることだ。ここに彼がNo.2であることの理由があるのかもしれない。No.1ホストの聖也とは違い、彼には情があり、故に聖也とは別の個性として愛されるに値するが、同時に聖也に比べるなら徹底性が足りないため聖也を超えることが難しい。云わば二重の意味で甘いのだ。とはいえ聖也が情を欠いているわけではない。むしろ真相は逆で、誰よりも熱い情を抱きつつも全てを秘めている。遼介に見送られながら都会を去り行く津田綾子を、聖也もまた陰から密かに見送っていたことがその証明であるし、津田綾子が自ら育てたNo.1ホスト聖也を今でも誇りにしていることはその傍証であり得る。聖也はNo.1であるため云わば鬼と化している。そうであれば遼介の道は、「仮面ライダー響鬼」ではないが、鬼であるために鬼を超えることであるのかもしれない。