追悼二件

今月十六日に逝去した田村高廣(享年七十七)が昭和五十六年に主演した小栗康平監督の映画「泥の河」がNHK衛星第二放送で夜八時三分から放映されていたのを偶々途中数分間だけ見た。流石に若くて元気で機敏だが、しかし考えてみると昨年三月末から十月初まで放送されたNHK朝の連続テレビ小説「ファイト」における村上義高役でも、老人の風格の中になお若くて色気ある魅力は健在だった。逆に「泥の河」でも、少年たちに優しく語り掛ける姿には既に老成とも云いたくなる重厚な風格があった。

小栗康平監督作品集 DVD-BOX

俳優、岡田眞澄逝去。享年七十。戦後間もない頃から活躍し多くの映画・テレヴィ番組・舞台等で活躍した人だが、最近では堤幸彦監督作品「トリック」において山田奈緒子仲間由紀恵)の父、山田剛三の役を演じたのが記憶に新しい。自称霊能力者のトリックを暴く著名な手品師だったが、ついに出現した「本物の霊能力者」との対決に敗れ、妻の山田里見(野際陽子)に抱かれながら亡くなった男の役だった。劇中では、奈緒子の回想する剛三が自称霊能力者たちのインチキを暴露する場面、少女時代の奈緒子(成海璃子)に手品を見せる場面、里見に抱かれながら奈緒子の眼前で亡くなる場面等に岡田眞澄が出演していたが、それら以外では主に写真、しかも山田剛三遺影での出演だった。昨年十一月十三日放送「トリック新作スペシャル」でも既に写真のみの出演だったが、来月から公開される新作映画「トリック劇場版2」ではその写真が文字通り遺影と化してしまう。映画館は故人を偲び御冥福を祈る場ともなるだろう。