マイボス・マイヒーロー第二話

日本テレビ系。土曜ドラマ「マイ☆ボス・マイ☆ヒーロー」。
脚本:大森美香。原案:「頭師父一體」。音楽:高見優。主題歌:TOKIO「宙船(そらふね)」(ユニバーサル・ミュージック)[作詞&作曲:中島みゆき]。企画協力:明石竜二(ミレニアム・ピクチャーズ)。制作協力:トータルメディアコミュニケーション[TMC]。協力プロデューサー:小泉守&下山潤(TMC)。プロデューサー:河野英裕山本由緒日本テレビ)&山内章弘&佐藤毅(東宝)。企画:東宝。演出:佐藤東弥。第二話。
後半のバスケットボール試合の場が面白かったのは云うまでもないが、前半の少年少女たちの密かな恋の鞘当の場も大いに楽しめた。「桜ナントカ」こと桜小路順(手越祐也)は既に榊真喜男(長瀬智也)と無二の親友になった気分で「マッキー」呼ばわり。ところが、私立セント・アグネス学園3年A組の学級委員=「組長」に自薦で就任した榊真喜男が何かと苦労している中、梅村ひかり(新垣結衣)が急接近。組長の云わば「女房役」を買って出たわけなのだが、桜小路順は面白くない。他方、梅村ひかり側も、桜小路順が榊真喜男の親友気取りどころか殆ど恋人気取りで、「マッキー」呼ばわりしているのは気に入らない。一人の男をめぐり一人の男子と一人の女子が対立し始めた。この三角関係に無関係ではいられないのが真鍋和弥(田中聖)。極道「関東鋭牙会」における榊真喜男の弟分として身の回りの世話をしたり学校生活のための手助けをしているのは真鍋和弥なのだ。彼にとって、崇拝する「兄貴」を馴れ馴れしく「マッキー」呼ばわりする桜小路順は「クソガキ」でしかない。「ザテレビジョン」今週発売号において桜小路順役の手越祐也が予告していた男三人女一人の危険な四角関係がこうして早くも顕現したのだ。
球技大会のバスケットボール部門に参加した榊真喜男率いる3年A組の戦いようが素晴らしかった。学園を舞台にした青春ドラマにおけるスポーツの試合の表現として実に秀逸の出来栄えだったと云えるのではないだろうか。手に汗握る興奮の展開の連続だった。
球技大会の各部門。牧信一(足立理)は卓球に参加していた。平塚隆介(武田航平)はサッカーの中心人物だったかと思う。各分野とも3年A組の連中はもとよりやる気がなくて、無気力な戦いようで初戦で敗退していたが、少なくとも卓球の牧信一は案外ああ見えて真剣に戦っていたのではないだろうか。単に弱いだけなのだと思う。だから彼が、榊真喜男率いるバスケットボール組の予想外の奮闘に興奮し感動し、途中から熱心に応援し始めたのは自然の成り行きだったのだ。3年A組が優勝を決めたとき、牧信一と抱き合って喜んでいたのは誰だろうか。やや遠くに一瞬だけ見えた姿の感じでは多分、早坂雅人(西野成人)だろう。確認したところ試合の最初から二人仲よく並んで観戦していた。他方、平塚隆介は長髪の諏訪部祐樹(広田雅裕)と並んで体育館の壁際に気だるそうに面倒くさそうに座っていた。
ここで最も注目に値するのが星野陸生(若葉竜也)の微妙な変化であるのは云うまでもない。彼も内面で密かに熱くなっていたのは間違いないが、不良集団の親分としての立場から、子分たちの手前、そう簡単に態度を変えるわけにはゆかない。親分というのは本質的に不自由なのだ。
榊喜一(市村正親)と榊真喜男の、父子二人だけの食卓の場面も味わい深かった。これまで父は子に対して親分としてしか接してこなかったが、今それを後悔していて、親子の絆を確認しようとしている。子もそのことを分かってはいるが、そう簡単に接し方を変えることができるわけはない。父もまた実は同じなのだ。結果、何とも微妙な空気になる。しかし微妙ではあっても、両名とも何とか親子らしい会話をしてみようと頑張ってもいる。さらに微妙な感じになってしまう。そうした親分と「若」との父子関係が面白かった。
真鍋和弥が坂を転がり落ちていたが、あれは本人がやったのだろうか。