仮面ライダーカブト第三十二話

テレビ朝日系。“スーパーヒーロータイム”「仮面ライダーカブト」。主演:水嶋ヒロ佐藤祐基。第三十二話。
親しい人の姿をしたワームに対し一体どう接すべきであるのか?という問題がこの物語の当初から現在まで繰り返し問われてきたが、今朝の第三十二話のはとんでもない難問だ。天道総司水嶋ヒロ)は旧姓「日下部」。両親がワームに殺害されたのち「おばあちゃん」に引き取られ、あのように育てられた。「おばあちゃん」の姓が「天道」で、従って妹の天道樹花(奥村夏未)は実は妹ではなく、従兄妹なのだろう。そして日下部ひより里中唯)こそが真の妹であると云うのだが、問題なのは、日下部ひよりの両親が日下部総司の両親ではなく、両親に擬態したワームであることだ。しかも厄介なことに日下部ひよりは擬態ワームではないのだ。日下部総司の父と母が殺害されたとき母の胎内に生命が宿っていた。その胎児は擬態ワームの体内に写し取られ、やがて生み出された。本来の胎児がワームによって殺害され、複写された子が成長して日下部ひよりになったのだから、最も単純な形式だけで見るなら確かに擬態ワームと何ら変わらない。それでもなお、これまでに見た擬態ワームと決定的に異なるのは、本来の日下部ひよりが生まれる前に殺害されたことだ。生まれたことさえなかった以上、擬態され複写されるべき容姿も記憶も精神も何も存在したことがない。現実に存在するあの日下部ひよりは、たとえワームであろうとも、かつて一度でも存在して生きて外形と内心とを作り上げ備えていた何者かを複写して擬態してあるわけではなく、むしろ日下部ひより本人であるとしか云いようがないのだ。ワームの悪の本質が殺人とその被害者からの容姿と記憶と精神の盗み、被害者の遺族や関係者への詐欺ということにあるとすれば、日下部ひよりは悪ではない。