渡る世間は鬼ばかり第二十七話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:山崎統司。第八部第二十七話。
本間由紀(小林綾子)の言い分に共感し得る人間は世に存在するのだろうか。なるほど本間家のこの数十年間が不幸の螺旋階段だったとの主張には首肯できる。英作(植草克秀[少年隊])と由紀が母の常子(京唄子)によって幾重にも条件付けられた生活を強いられて、不図気付けば何一つ持ち合わせていなかった事情は、一応は理解できなくはない。しかし逃れることができなかったわけではないだろうし、現に英作は曲がりなりにも常子の支配を脱し得ていたではないか。むしろ由紀は自ら進んで常子の財産を継承したいと宣言し、兄をも追い出して本間病院の二代目を襲名したのだ。病院の経営が破綻したのは由紀の責任であり、今の由紀に自由に動かせる金が一銭もないのもその結果でしかない。経営能力のない医師になったのは常子の教育の作用と反作用のゆえであるかもしれないが、自力で自分を変えることができなければ大人とは呼ばれない。全てを周囲の所為にして己の問題を顧みることが一度もないばかりか兄や兄の妻や兄の妻の家族から無償の支援があって当たり前であるとさえ思い込んで、百万円もの多額の資金の提供をも気軽に要求してしまえるようでは、由紀の子、本間紀彦(村山蒼也)が将来ロクな人間に育たないだろうことも既に目に見えている。