渡る世間は鬼ばかり第三十話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:荒井光明。第八部第三十回。
本間長子(藤田朋子)と「本間のお母さん」神林常子(京唄子)との和解。本間病院を廃し宝飾品をはじめとする財産の殆どを売却して身軽になったことで自由な境地に達し、寛容な心を持ち得るようになったと語った常子。確かに少し前までのあの強引な言動と比較すると別人のようだが、想い起こせば予てから人格者の気配もなくはなかったのだ。
人里離れた「北丹波町診療所」で細々と産科医の仕事を続けていた常子が何時ものように自転車で出勤した朝、診療所の前で待っていた別居中の夫、神林清明愛川欽也)。農村を舞台にした突然の純愛物語。このドラマティクな再会の場は上空から眺められ、静かに動かない風景の中に生じた出来事の突発性を、激しくも味わい深く強調した。「渡る世間は鬼ばかり」が「世界の中心で、愛をさけぶ」に近付いた瞬間と云えるかもしれない。