たったひとつの恋第四話

日本テレビ系。土曜ドラマたったひとつの恋」。
脚本:北川悦吏子。音楽:池頼広。主題歌:KAT-TUN「僕らの街で」[作詞&作曲:小田和正]。制作協力:三城。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁。演出:南雲聖一。第四話。
互いに愛し合っているはずのヒロト亀梨和也)とナオ(綾瀬はるか)の間を引き裂く身分の差。先ずはヒロトの母、神崎亜紀子(余貴美子)が二人を引き離そうと仕掛け、次いでナオの父、月丘雅彦(財津和夫)が動き始めた。ここで気になるのは神崎亜紀子の動機だ。月丘雅彦の動機については何ら疑問はない。大富豪が病弱な愛娘の交際相手として貧乏な青年を警戒し却下するのは、一般論で云えば自然な心理だろう。それに対し、貧乏な女が長男の交際相手として大富豪の娘を却下するのは必ずしも自然ではないように思える。ことに神崎亜紀子の場合、評判の悪いユキ(高橋真唯)のような女こそがヒロトには似合いであると思い込み、ナオに対し「ヒロトにはカノジョがいる」と嘘まで吐いたのだから何とも理不尽だ。
神崎亜紀子はどうしてユキをヒロトの「カノジョ」と騙ったのか。その理由を了解するには二つの道があるだろうか。(一)もし神崎亜紀子が深慮の人であるなら、問題児といわれるユキが実は素直な少女で、ヒロトを今でも本気で愛してくれていて、上手く行けば理想的な似合いの二人組にもなり得るはずだと考えていたのかもしれない。(二)もし神崎亜紀子が浅慮の人でしかないなら、ユキが本当はどんな少女であるのかも知らないまま、ただヒロトからナオを遠ざけるだけのためにユキの話を持ち出しただけなのかもしれない。
何れにせよ前提としては、過度の身分の差は不幸を招くのみであるとの考えがあるはずなのだが、どうしてそのように考えなければならないのか。例えば「花より男子」において牧野家の人々は決してそのようには考えなかったではないか。その理由を幾つか想像してみよう。(一)貧乏な青年ヒロトとの恋は大富豪の娘ナオにとって余りにも多くを失うことになるのではないのか?ということを心配しているのかもしれない。(二)大富豪の娘ナオとの恋によって貧乏な青年ヒロトは相手の家族からも世間からも「財産目当て」の打算の恋ではないのか?と疑われるのを避けがたく、ヒロトがそれで傷付くことを心配しているのかもしれない。(三)単純に、身分の差を乗り越えることは難しいと信じているだけなのかもしれない。そして思うに、真相は三番目に挙げた身分の差の絶対視の一点にしかないような気がするのだ。神崎亜紀子の嘘の奥には何らかの考えがあったわけでもなく、何か予感するところがあったわけでもなく、単純に、身分の差を乗り越えることはできないのだから分相応の相手と交際する以外に選択肢はあり得ないのだ!と信じ込んでいるだけではないかと思われるのだ。神崎亜紀子は劇中に登場する大人たちの中でも重要な人物であるはずだが、少なくとも現時点ではその言動に学び得るものは皆無に等しく、共感することは基本的に難しい。
[登場人物&出演者]ヒロト=神崎弘人20歳(亀梨和也KAT-TUN])/ナオ=月丘菜緒20歳(綾瀬はるか)/コウ=草野甲20歳(田中聖KAT-TUN])/アユタ=大沢亜裕太20歳(平岡祐太)/ユウコ=本宮裕子20歳(戸田恵梨香)//神崎造船鉄工所修理工(田口浩正)同造船鉄工所修理工(浜田晃)同造船鉄工所経理(大島蓉子)レン=神崎廉10歳(斎藤隆成)//月丘達也25歳(要潤)//「元カノ」ユキ(高橋真唯)山下(波岡一喜)//月丘みつこ48歳(田中好子[特別出演])/月丘雅彦55歳(財津和夫)/神崎亜紀子48歳(余貴美子)。