月九のだめカンタービレ第四話

フジテレビ系。月九ドラマ「のだめカンタービレ」。
原作:二ノ宮知子のだめカンタービレ』(講談社「月刊Kiss」)。脚本:衛藤凛。音楽:服部隆之。主題曲(序曲):ベートーフェン「交響曲第七番イ長調op.92」/(終曲):ガーシュウィンラプソディー・イン・ブルー」。プロデュース:若松央樹清水一幸。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:武内英樹。第四話。
理想主義者の千秋真一(玉木宏)を日々苦悩させるのは野田恵上野樹里)と峰龍太郎(瑛太)と奥山真澄(小出恵介)の三人組だが、反面、千秋真一を激励し鼓舞して改めて理想を追求させ得るのも彼等三人組に他ならない。今宵は前半にコタツの話を描いて苦悩を描き、後半に「Sオケ」衆の練習と譜面の解釈の話を描いて激励を描いたが、その落差が楽しかった。とはいえ前半のコタツ話における峰龍太郎の暴走も、その発端を想起するなら、「コンマス」(コンサートマスター)としての責任を果たしたくて、千秋真一の思いを全て受け止める「レーダー」役になろうとしたことに起因していたのだった。彼等の行動は常に一直線で、狂いがないと云うも過言ではないのだ。
中華料理店「裏軒」主人の峰龍見(伊武雅刀)は今宵も絶好調。自慢の子息、龍太郎の「Sオケ」コンサートマスター就任を寿ぎ、宿敵「Aオケ」に勝つことを祈って「打倒Aオケラーメン始めました」の貼り紙を店内に貼り出したかと思えば、初の演奏会で「Sオケ」が大好評、大絶賛を博したのを慶び、「祝Sオケ存続定食始めました」のクス球を割っていた。
千秋真一に対して一方的に敵対する「この学校で二番目に有名な指揮科の大河内」こと大河内守(遠藤雄弥)も、今までの格好のままで大活躍。ピアノ科の千秋真一に「Sオケ」の指揮を任せる位なら指揮科の自分には是非「Aオケ」の指揮をさせて欲しい!とシュトレーゼマン(竹中直人)に泣き付いたものの、「ミカエーリ(見返り)」「ソデノシータ(袖の下)」も差し出さずに頼み事をするとは「オコガーマシ!」と叱られ、次いで「Sオケ」偵察に行けば門番の野田恵によって門前払いを食らった。ここで千秋真一の厳しい指導に付いて行けなくて次々倒されてきた「Sオケ」衆を目撃したことで彼は見当違いな自信を深めてしまったわけだが、ここで極めて興味深いのは、彼の「これじゃ、指揮者失格だな」「指揮者は先ず人間性!」発言が野田恵を奮起させたこと、そして同時に彼自身の「指揮者失格」をも浮き彫りにしたことだ。結局、「Aオケ」と「Sオケ」の競演の当日、千秋真一率いる「Sオケ」の大成功を目の当たりにした彼は、会場内の廊下を歩きながら荒れていたところ、シュトレーゼマンから本番の直前に突然「Aオケ」指揮者を任されてしまい、緊張の余り惨めな大失敗に終わった模様。とはいえ、その失敗の責任は彼のみにあるわけでもない。そもそも練習を一回も経験しないまま本番の直前に急に指揮者をさせられて上手くゆくはずがない。気の毒ではあった。指揮棒を飛ばして慌てていた様子が泣かせた。