渡る世間は鬼ばかり第三十六話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:山崎恆成。第八部第三十六回。
東京大学経済学部の学生であるはずの小島眞(えなりかずき)のあの知識欲の欠乏、野心の欠如は少々異常ではないだろうか。東大生ともあろう者が論文一つ満足に書けないなんて、そんな道理はないだろう。
小島久子(沢田雅美)は、昔の夫の山下健治(岸田敏志)が今の彼の妻の山下光子(奥貫薫)を家からも会社からも追放して自分と復縁してくれるだろうと信じることにおいて自信満々だ。満々の自信の根拠は金のこと以外には何一つなかったはずだが、健治の曖昧な言が徒に誤解を招いた面も確かにあるとはいえ、今や久子は、健治が光子よりも自身をこそ愛してくれているはずだとさえ思い込んでしまっている。そして思い込みは既に確信の域にまで達している。何の根拠もないのに。今宵の健治の、まるで久子を疎ましく思い、何とか避けようとするかのような冷たい態度がそのことを物語る。しかるに久子の無茶な無根拠な一方的な思い込みが小島家ラーメン店「幸楽」の倒産の危機を出来しつつあるのだ。気になるのは山下家の会社の経営の不振が何に起因するのか?という点だが、果たして劇中に解明されるだろうか。