大河ドラマ風林火山第六話

NHK大河ドラマ風林火山」。原作:井上靖。脚本:大森寿美男。音楽:千住明。主演:内野聖陽。演出:磯智明。第六回「仕官への道」。
北条氏康(松井誠)と山本勘助内野聖陽)の心理戦。北条氏康にとっては、眼前に現れた未知の人物が敵であるのか味方であり得るのかを見抜かなければならなかったし、対する山本勘助にとっては、北条家の若殿が自分をどう試そうとしているのか、そしてどう見抜こうとしているのかを見抜かなければならなかった。ここでは北条氏康の大度量が光った。考えてみれば戦国の世では誰が誰をどこでどう裏切るか日々油断も隙もなかったろうから、若殿といえども人の上に立つ程の者は、常に幾つもの可能性を想定して行動せざるを得なかったはずだ。まさしく百戦錬磨だったに相違ない。それに比べるなら山本勘助は、この時点では、たとえ知と武芸には秀でていようとも、何とも世間知らずな野生児に過ぎなかった。しかし彼の洞察力と胆力は抜きん出ていて、そして若殿はそのことを見逃さなかった。英雄同士の対峙というのは、何と深く面白いことだろうか。
その点、梅岳承芳改め今川義元谷原章介)の貴人ならではの嫌味な言動が実のところは何を意図していたのか?も決して容易ではない難問だ。彼は本当に山本勘助の容姿を嫌っただけなのか。それとも、今川家への仕官を望んでいるこの男の眼帯に隠れた隻眼には忠誠とは真逆の意図が潜んでいるかもしれない恐れを感じ取っていたのではなかったか。そう考えるなら誰も彼も実に油断ならない人物ばかりだ。山本勘助は油断し過ぎなのだ。