渡る世間は鬼ばかり第四十七話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:山崎統司。第八部第四十七回。
浅田和久(深江卓次[石原軍団])は野田あかり(山辺有紀)に結婚を申し込んだ話を取り消した。その理由として彼の語ったことは一方的で無茶な理屈ではあったが、しかし確かに理屈ではあった。間もなく海外へ赴任して重い仕事に取り掛からなければならなくなる彼にとって、仕事に夢中になる余り家庭を顧みる余裕をなくしてしまう恐れのある今、敢えて結婚することは当の新婚の妻に、右も左も分からない海外の赴任先で一人寂しい思いをさせ、不自由を強いて不幸にしてしまうかもしれないわけだから、自信を失くしたのも当然のことだ。首肯できる。しかも妻にする予定だった野田あかりは、オニギリ移動販売の会社を自ら立ち上げて自ら動かしてきた「働く女性」であり、しかも一度は農家の嫁になったこともあるものの我慢できず離婚した過去もあるのだから、海外で主婦業に専念できる道理がない。浅田和久がどのような男であり野田あかりがどのような女であるかを踏まえるなら今回の結婚が上手くゆく可能性は極めて低かったのだろう。そう考えるなら、この結婚に早くから反対し続けていた野田弥生(長山藍子)の洞察は流石に鋭かったと云わざるを得ない。
岡倉葉子(野村真美)と大原透(徳重聡)との間の重大な問題を解決するため颯爽と再登場した葉子のかつての夫、宗方直之(井上順)。彼は立派な人物だった。彼の徳が高ければ高い程、かねてからの不倫相手の若い大原透と結ばれるため宗方を捨てた葉子の愚かさが強調される。