滝沢秀明&長澤まさみロミオとジュリエット

日本テレビ系。「夢二夜 シェイクスピア ドラマスペシャル」。第一夜「ロミオとジュリエット すれちがい」。
原作:ウィリアム・シェイクスピア。脚本:井上由美子。音楽:菅野祐悟。プロデューサー:前田伸一郎&高木治男&井上由紀&大野哲哉。制作協力:ザ・ワークス。演出:大谷太郎
銀杏の黄葉の並木道の美しかったこと。あの黄色の、或いは殆どオレンジ色の光に満ちた空間を主要な舞台の一として設定したのが素晴らしい。
シェイクスピア作品中で最も著名なものの一つ「ロミオとジュリエット」。その中でも特に広く知られているのはキャピュレット家の城館のバルコニーの夜の場だろうが、あの悲しい恋の物語を原作とするこの約二時間の現代劇には、あの有名な場面に基づいた場面が二回あった。一つ目は前半、木平家の窓の下に立った森田広道(滝沢秀明)と、窓の中の木平樹里(長澤まさみ)との会話。しかも「ロミオとジュリエット」のあの場面を想起し、踏まえ、自分たちの境遇をそこに重ね合わせながらの。そして二つ目は終盤、病院の夜。広道の母、森田時枝(田中美佐子)が入院していて、窓の下には時枝の夫、森田儀一(山下真司)と、樹里の父、木平礼三(三浦友和)。実に、このドラマの核は主人公たちの恋よりは主人公たちの親たち三人の間の遠い過去の苦い恋の思い出にこそあった。時枝との恋を引き裂かれた礼三は、云わば恋のために身を捧げ切れなかった敗北のロミオだったが、他方、彼等の恋を引き裂いた儀一は、愛する妻への罪悪感、心の痛みのゆえに、恋の戦いにおける己の勝利を信じ切ることができなかったため、仕事で勝とうとして無理を重ねて失敗を重ね、ついには逃亡者と化し、結局はロミオ同然、妻とも子とも引き裂かれてしまったのだ。