新番組わたしたちの教科書

フジテレビ系。ドラマ「わたしたちの教科書」。第一話。
脚本:坂元裕二。音楽:岩代太郎。主題歌:BONNIE PINK「Water Me」(ワーナーミュージックジャパン)。プロデューサー:鈴木吉弘&菊地裕幸。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:河毛俊作
驚く程に盛り沢山の第一話だったが、中でも最大の盛り上がりを見せたのは喜里丘中学校における「集団ヒステリーのような」騒動の場面だったろう。全てのそもそもの原因は、互いに無邪気に悪フザケをしていた二人の男子の、力の加減を知らなかった所為で生じた流血にあった。それは単なる鼻血に過ぎなかったが、ボクシングの真似事で友に鼻血を出させるのは加減を知らないからだし、鼻血で怒るのも鼻血なんか大したことではないことを知らないからだろう。この一つの小さな喧嘩は何組もの大喧嘩を惹起し、喧嘩の連鎖は校庭を埋め尽くす程の騒動と化して、そして動乱の群衆の周囲にはそれを見世物として楽しんでいたさらに大きな群衆。普通には到底あり得ない事態に発展したのだ。そのとき教員たちはどのように行動したか。もちろん皆で必死に騒ぎを収束させようと努めた。彼等が内心、何を感じ考えていたかは知らない。例えば、校内をなぜか仕切っている風情の若い教諭、大城早紀(真木よう子)は、生徒たちの心配をしていたのではなく、むしろ校内の権力者である副校長=雨木真澄(風吹ジュン)の留守中にこんな事件を発生させた不始末を悔しがっていただけだ。他の連中にも色々な思惑はあったかもしれない。あのような場面で教員の採るべき行動の様式に従ってみせただけだったのかもしれないが、ともかくも「よき教師」を演じておくのは決して悪いことではない。なにしろ八幡大輔(水嶋ヒロ)に至っては、そのように演じることを途中で放棄し、傍観者と化していたのだ。疲れて休んでいただけなのか。どんな結果になろうとも「吾事に非ず」とでも思っていたのか。騒動のさらなる拡大を期待してはいなかったか。純粋に子どもたちのことを考えていたのは臨時教員の加地耕平(伊藤淳史)一人だけだった可能性さえ、なくはない。ともかくもこの異常事態の中で藍沢明日香(志田未来)謎の転落があったのだ。病んだ近代「監獄」としての学校を舞台にしたドラマならではの、寒々しくも興奮度の極めて高い奇妙な一場だったと云えるだろう。