仮面ライダー電王

テレビ朝日系。「仮面ライダー電王」。第三十二話「終電カード・ゼロ」。
桜井侑斗(中村優一)を中心にこの番組を見ている者にとっては特に今回、何時も以上に見所が多く見応えがあった。一々挙げてゆけば限がない程。野上愛理(松本若菜)を救出に来た侑斗の姿を見て、消えていた過去の記憶の微かに甦りつつあった愛理が、侑斗の頬に手を触れて、喫茶店「ミルクディッパー」をめぐる自身の記憶を、弟の良太郎(佐藤健)とともに彩るはずの大切な「もう一人」について思い出そうとした瞬間は、中でも際立って印象深い場面だった。だが、ついに愛理が眼の前の侑斗を、失われた思い出と結び付けようとしたその瞬間、外の戦闘の音に反応して侑斗は戦場へ走った。正義感、責任感のゆえに己の大切なものを消費することを辞さなかった侑斗の、自己犠牲の精神が泣かせる。
もっとも変身用カードを使用することで消費されるのが何であるのか、明確には今なお解らない。侑斗の将来の姿としての、そして愛理の愛する人としての、現在あるべき「桜井侑斗」に関する記憶が人々から失われることが「消費」の意味だったわけだが、良太郎の記憶からは消えてはいないように思われるからだ。何故だろうか。「特異点」だからだろうか。