花ざかりの君たちへイケメンパラダイス最終話

フジテレビ系。ドラマ「花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス」。
原作:中条比紗也花ざかりの君たちへ」。脚本:武藤将吾。音楽:河野伸高見優。演出:松田秀知。第十二話=最終回。
桜坂学園、卒業式の前の文化祭。2年C組はメイド喫茶を企画。第一寮生でもある北花田航平(武田航平PureBOYS])は、メイドではなくチアリーダー風の女装。露出した肩と腕が太くて強そうな感じだった。それに先立ち彼は大国町光臣(高橋光臣)等とともに、性別を偽り男子校に潜り込んで平然と生活していた変態女を激しく糾弾していて、このメイド喫茶の企画に関しても北花田は、本物の女がいるなら女装なんかやっても意味ないから止めだ!と反発。彼のこの強硬姿勢は正義に適っているはずだが、劇中では完全に悪役扱いをされていて気の毒だった。芦屋瑞稀(堀北真希)の行為は云わば女湯に忍び込んだ変態男みたいなものなのに。
武田航平高橋光臣加藤慶祐五十嵐隼士等のわずかな出番を楽しみにして視聴してきた者として約三ヶ月間のこのドラマを楽しんできたが、不満がないわけではない。最終回を記念して最後に書いておこう。
以前にも書いたように、この物語の主人公の行為は冷静に見るなら甚だ不快なものでしかなく、荒唐無稽な空想物語の出来事として楽しく愉快に描かない限り、見るに堪えない。しかるにこのドラマの制作者は荒唐無稽の愉快な役割を全て大勢の脇役たちに割り当て、主人公たち数人をそこからなるべく切り離し、真面目に描こうとした。真に荒唐無稽なのは主人公たちに他ならないというのに。無謀なことだ。
関連して云えば、男子校を舞台にしたドラマであるのに女子の出演が多かった。その点では、かつて生田斗真の出演したドラマ「ネバーランド」に近い。テレヴィドラマには女子を出すべし!という思い込みがドラマ制作者間にあったのだろう。女こそが華であるとでも思い込んでいるのかもしれない。だが、このドラマの題は「イケメンパラダイス」であって、従って華は男子でなければならない。視聴者は皆、女子ではなく男子をこそ見たかったのではないのか。そこを履き違えていては話にもならないが、「性」に関する偏見が制作者間に根深くあったものと推察される。そのことの端的な表れとして、梅田北斗(上川隆也)という人物の造形の歪みを挙げなければならない。彼は設定上ゲイ男子とされているが、実は昔は女子と交際していたらしいし、またゲイというのも所詮は一時の病(!)に過ぎないとされ、やがてはその「女嫌い」病を克服して昔の女と復縁するだろうことが描かれていた。だが、それは普通ゲイとは呼ばれないだろう。このドラマ制作者の偏見の深さを物語っている。
この偏見の基本は、女は男に愛されるものであり、男は女を愛するものであるとでも云ったような類の思い込みにあるかもしれない。だから芦屋瑞稀は、劇中で云われた通り殆ど「ストーカー」のような執念で佐野泉小栗旬)に付きまとったにもかかわらず、結局、芦屋ではなく佐野が愛する側、愛されるのは佐野ではなく芦屋の側という奇妙な構図が出来上がってしまったわけだろう。女が男を愛することもあれば男が女を愛さないこともあるという真理を丸で弁えない者の思い描いた「パラダイス」だったと評して可だろう。