仮面ライダー電王第四十三話

テレビ朝日系「仮面ライダー電王」。柴粼貴行演出。第四十三回「サムシング・ミッシング」。
物語を動かす謎を解く鍵が二点ばかり提出されたようだ。一つはキングライナー駅長(石丸謙二郎)の、時間の分岐点が桜井侑斗(中村優一)にあるとの説には疑問ありとの調査報告を受け、デンライナーのオーナー(石丸謙二郎)が提起した疑問点。青年=桜井侑斗(所謂「桜井さん」)の失踪と、それに伴う彼の婚約者=野上愛理(松本若菜)の記憶喪失については、愛理の弟=良太郎(佐藤健)の証言によってしか知ることができていないが、果たしてその証言は完全に正確であるのか?事件の前後にも何かあったのを忘れているのではないのか?というのがそれだ。「記憶の書き換え」というのは例えば二〇〇三年放送の日本テレビ土曜ドラマ「ぼくの魔法使い」第二話において主題化されたことがあったが、どんな時間の改変をも超越し得る「特異点」として全ての記憶を保持し得るはずの良太郎においても、あの失踪の頃、「記憶の書き換え」に近い事態が何か発生していたのだろうか。
もう一つは、仮面ライダーゼロノスとして戦闘の現場に急行した少年=侑斗の行動に対してカイ(石黒英雄)の示した強烈な違和感と疑問。カイ配下のイマジンが良太郎=仮面ライダー電王と青年=桜井侑斗(所謂「桜井さん」)の両方を一挙に打倒しようとした瞬間、そこへ急行した仮面ライダーゼロノス=侑斗は、将来の彼自身としての(そして皆が「分岐点」と目してきた)青年=桜井ではなく、良太郎を助けたのだ。このこと自体は、少なくとも視聴者にとっては、良太郎と侑斗の間の、ここ数話を通しての友情の深まりを物語る行為として軽く了解することもできないわけではない。しかるに視聴者の知らない真実をよく知るはずのカイは強烈な違和感を抱いて疑問を感じた模様。要するに、良太郎は単に漠然と「時間を守る」=「記憶を守る」ために闘わなければならないと信じているが、侑斗はそれをもっと端的に、良太郎をこそ守らなければならない事情が何かあることを(少なくとも「何かあること」だけは)知らされているのかもしれない…ということなのだろう。