新番組=斉藤さん第一話

今宵からの新番組。
日本テレビ系。水曜ドラマ「斉藤さん」
原作:小田ゆうあ『斉藤さん』(集英社)。脚本:土田英生。音楽:池頼広。主題歌:観月ありさ「ENGAGED」。制作協力:AX-ON。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁/佐藤毅(東宝)。企画:東宝。第一話。演出:久保田充。
斉藤全子(観月ありさ)は小さな不正をも決して見逃さない。喧嘩をも辞さない。しかし現今話題の「怪物親(モンスターペアレント)」に代表される類の所謂クレイマーとは異なる。むしろ対極に位置するのが明白だ。そして恐らくは三上りつ子(高島礼子)率いる有閑主婦連こそ怪物親の候補生に他ならない。なぜなら阿久津高校に通う不良高校生、柳川正義(山田親太朗)の母親の無理難題を受け容れてしまった時点で既に、怪物親の存在を容認しているも同じことだからだ。怪物親の存在を容認し庇い立てまでもした者は、自身そうなることをも容認することだろう。有力者であれば何をやっても許されるはずだ!という考えと、客であれば何をやっても許されるはずだという考えとの間に大した差はない。否、根本的には同じことだ。
斉藤全子が三上りつ子率いる有閑主婦連に責められていたとき、「斉藤さん」と親しくなろうとしていたはずの真野若葉(ミムラ)はその場では味方にはなれなかった。真野尊(平野心暖)のことであんなにも助けられたのに。しかし真野のあの弱さを責めるのは難しい。やはり正義は、実践するには勇気を要するからだ。その日の夕暮れ時、真野が有閑主婦連の賑やかな茶会に参加しながらも全く楽しめなかった痛々しさには共感し得る。
他方、何時も強そうな「斉藤さん」が、同じ夕暮れ、縁側で寂しそうに落ち込んでいた姿は、もっと深く痛ましかった。今晩の夕食は外食にしようか?と一人子の潤一(谷端奏人)に語りかけていたのは、夕食を準備する気力さえも失せる程に落ち込んでいたことを物語る。でも確り者の潤一は、母の手料理を食べたい!と云った。働くことで嫌なことを忘れて元気になって欲しいという意の激励に他ならない。実に確りした子どもだ。
強く生きてゆくために体力を付けたくてスポーツクラブにも通う斉藤全子。三上りつ子配下の山本みゆき(濱田マリ)等は、「斉藤さん」がそこのインストラクター泉温之(弓削智久)と不倫の交際をしているに違いないと噂をしていた。もちろん事実無根の噂話に過ぎない。山本みゆきをはじめとする有閑主婦連は皆、三上りつ子との茶会に日々多くの時間を浪費しなければならないから、斉藤全子のように自分の時間を自分のために有効に使うということができないのだろう。だから下品な発想しかできないのだ。
街の主婦連を魅了する若くて爽やかなスポーツクラブのインストラクター、泉温之を演じていたのは弓削智久。相変わらずの変幻自在振り。高校球児を演じたかと思えば、闇の勢力と結託した官僚機構の幹部を演じ、柄の悪い若者を演じたかと思えば爽やかな好青年にもなる。