仮面ライダーキバ第四話

テレビ朝日系。「仮面ライダーキバ」。井上敏樹脚本。石田秀範演出。第四回「夢想!ワイルドブルー」。
先週から登場した名護啓介(加藤慶祐PureBOYS])。バウンティハンターと称されるこの「正義の味方」の寸分の隙もない恰好よさに、かねて思い描いてきた理想の父親像を見出した紅渡(瀬戸康史D-BOYS])は、現実の父親=紅音也(武田航平PureBOYS])がとんでもない人物だったという事実を突き付けられて、落ち込んでいる件について彼に相談した。この相談に対し適切な助言を与えた名護啓介。適切で模範的ではあったが、反面、無難でしかなかったと云えなくもない。でも紅渡はそれを聞いて心機一転、父の罪を償うべく被害者たちのため頑張ったのだから、やはり正解だったのか。
だが、ファンガイアハンターにおける名護啓介の同僚、麻生恵(柳沢なな)の見方は違った。麻生恵によれば、名護は己よりも弱い立場の者を何時でも必要としている。なぜなら常に他人よりも優位に立ちたいから。普段からやたら丁寧な言葉を操りつつも基本的に「…しなさい」の類の命令口調でしか他人に話しかけないのも、そうした思考の表れに他ならないらしい。なるほど見事な分析だ。しかるに麻生恵のこの鮮やかな分析について名護啓介は分析し返した。彼によれば、麻生がこのように名護の言動について分析するのは、名護よりも優位に立つためだ。なぜなら、そうでもしない限り麻生は名護より優位に立ち得るものを何一つ持ち合わせていないからだ…と。論戦としては素晴らしいが、完璧な格好よさを披露したヒーロー名護啓介が思いのほか変人だったことが早くも証明されてしまった。
紅渡を幻滅させた実の父、紅音也(武田航平PureBOYS])は今週も二十二年前の好景気の時代で絶好調。近年の仮面ライダー物語において彼以上に人生を楽しんだ者はいないのではないだろうか。
とはいえ、紅渡に対し紅音也の罪深さを突き付けた弁護士の夏川綾(橘実里)が、敵ファンガイアとしての正体を現しつつ明かした事実は、紅渡の父への見方を再び変えたようだ。ファンガイア夏川によれば、紅音也は自ら奏でるヴァイオリンの音色によって枯れた花を甦らせて満開に咲かせたらしい。その姿に魅了された夏川綾は紅音也を愛したが、恋多き音也には別に麻生ゆり(高橋優)という「運命の女」がいて、本気では相手にしてもらえないことを思い知った。そこから愛が憎悪へ変わったのだ。この懐想は二つの事実を伝える。一つは紅音也が古代神話のオルフェウスのように音楽によって奇跡を起こし得る神のような芸術家だったこと。もう一つは彼が、捨てられた女に親子二代二十二年間にもわたる憎しみを抱かせざるを得ない程に、深く愛された男だったこと。