新番組=学校じゃ教えられない!第一話

今宵からの新番組。
日本テレビ系。火曜ドラマ「学校じゃ教えられない!」。
脚本:遊川和彦。音楽:福島祐子&高見優。プロデューサー:大平太&桑原丈弥&井上竜太(ホリプロ)&太田雅晴(5年D組)。制作協力:ホリプロ5年D組。演出:猪股隆一。第一話。
なかなか楽しかった。昭和後期のTBSの青春コメディのようでもあった。「ハチワンダイバー」における「受け師」役の仲里依紗がこのドラマでは女子高校生の横山永璃を演じていて、それが殆ど高校生とは思えない程の貫禄に満ちているのも面白かったが、何と云っても男子五人組の、高校生というよりは中学生かと思えてしまう感じの幼さ加減が楽しかった。しかも貫禄ある女子と幼稚な男子との対比は多分、ドラマ制作者の狙い通りなのだ。
このドラマの中心人物、水木一樹(中村蒼)が「誰にも云えないマサカを抱えていること」については、今宵の最後の場面で、見城瞳(朝倉あき)が鋭く云い当てた。それが当っているのか、外れているのか、劇中には未だ確定してはいないが、恐らく当っているのだろう。なぜならそのことは今宵の第一話の冒頭から、ささやかながら巧妙に示されていたからだ。
物語は、彼が目を覚ましたところから始まった。彼は悪い夢を見て、うなされていた。入学試験の会場、周囲は女子ばかり。女子たちは彼にキスの攻撃を仕掛け、彼は怯えていた。それは彼にとっては悪夢だった。そして朝。高等学校の入学式の日。でも、彼は憂鬱。家族も冷たかった。なぜか。彼は学業においては優秀で、ゆえに本来ならもっと優秀な一流の進学校にも余裕で入り得たはずなのに、敢えて一流ならぬ一・五流の、変な学校へ進学してしまったからだ。それも親の反対を押し切って。それどころか実は彼自身の志望を曲げてまでも。だから憂鬱な入学式の朝なのだ。
この学園ドラマの舞台は有名な女子高等学校。ただし今年から共学化し、先ずは男子を五人、初めて受け容れたところ。水木一樹はその一人だった。彼がこの学校への進学を決めたのは、大親友の西川叶夢(森崎ウィン)がそこへの進学を決め、彼にも一緒に入るよう誘ったからだった。西川吐夢は無類の女好き。だから女子だらけの学校生活に憧れた。だが、誘われた側の水木一樹はそうではなかった。西川叶夢に誘われて、不本意にも入学したに過ぎなかった。
入学したこと自体を憂鬱に感じている様子。入学の動機。そして女子たちの群から逃れようとするかのような悪夢。以上、ドラマの冒頭に呈示された要素を総合するなら、水木一樹が西川叶夢に対して「誰にも云えないマサカ」の思いを抱いているだろうことは、殆ど自明に近かった。だから、水木一樹に興味を抱いている様子の見城瞳がそのことを鋭く見抜き、言い当てた瞬間、吾等視聴者はその鋭い勘に、(観客として)深く首肯し得たのと同時に、逆に水木一樹と一緒になって狼狽することもできたのだ。
彼にも時折、担任教諭「舞ちゃん」こと相田舞(深田恭子)の豊満な身体に触れて少し興奮するような場面もあったとはいえ、基本的には異性に対する性欲を表すことがなく、女子に強い関心を示すこともなかった。でも彼は、恋の感情というものを他のどの生徒よりもよく知っていて、それを明確に言語化できる程にそれについてよく考えてもいた。女子たち皆を前にしての、校庭における演説がその辺をよく物語っていた。
男子五人で性欲について語り合っていたとき、彼は殆ど発言しなかった。しかし彼にも性欲がないわけではない。むしろ旺盛にあるだろう。ただ、方向性が違うのだ。皆が同じ方角を向いて盛り上がっている只中にも一人だけ違う方角に向かわずにはいられない少年の複雑な思い。それを上手く描いてくれれば夏の異色の青春性欲ドラマとして最高に楽しめることだろう。
それにしても、次週の予告における中村蒼以下五人衆の全裸には驚いた。来週放送分は最高画質での録画を予約してしまおう。