渡る世間は鬼ばかり第十七話

昨夜放送されたテレヴィドラマ。
TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:竹之下寛次。プロデューサー:石井ふく子。第九部第十七話。
岡倉大吉(宇津井健)が、何時までも実家に寄生しておきながら偉そうにしている厚かましい末娘の本間長子(藤田朋子)を、ついに料亭「岡倉」からは追放し、同時に新たな給仕掛として、事実上の恋人とも云える小宮怜子(池内淳子)を迎え入れるに至ったのに対し、今度は青山タキ(野村昭子)が反撃を始めた。大吉が小宮に任せようとする仕事を悉く先回りして済ませておいたタキは、大切な仕事を他所様に任せるわけにはゆかぬとまで言い放った。これまで永く大吉の忠実な犬として行動してきた老女タキが陰湿な本性を顕にしたのだ。この、これまでは内面に秘められていた性悪な本質は、実のところは今までも時折、言葉の端々に露出してはいたように思う。大吉はどう乗り越えるのか。長子を店から追放したとしても、云わば臨時のアルバイトが一人いなくなるようなもので、影響は大きくないだろうが、かなり永い期間、事実上の女将のような立場で店を仕切ってきたタキを、今さら店から追放することにもなれば影響は甚大だ。
しかしタキの狙いは何だろうか。何故こんな反撃に出たのか。長子のためなのか、それとも己のためなのか。だが、己のためとはどういうことを指しているのか。まるで女将のような(擬似女将とも云うべき)己の立場を守るためには、小宮が大吉と結ばれて自ずから真の女将となること(擬似女将の立場を享受するタキにとっては最悪の事態!)を阻止せねばならぬ!ということだろうか。青山タキという人物に今後はもっと注目する必要がある。
岡倉家四女の耐震強度偽装「一級建築士」大原葉子(野村真美)は、零落した末に富裕の元夫の宗方直之(井上順)に頼っていたことを今の夫の大原透(徳重聡[石原軍団21世紀石原裕次郎])に知られ、家出をされてしまって以降、まるで狂ったように毎日、毎晩、この若い夫が働いていそうな工事現場を探し回っていた。その姿は村上華岳日高川清姫図の如し。でも苦労の甲斐なく大原透の姿は見付からなかった。疲れ果てて気力を失いかけたところで、唐突にその夫が家に戻ってきていた。心なしか少し痩せて男前度が少し上がったようだ。葉子は宗方を金蔓として愛し、大原を年下の若い美男子として愛する。そのことに大原は疑問を感じていたに相違ないが、それでも葉子との関係を再開したいのだろうか。