新番組=セレブと貧乏太郎第一話

今宵からの新番組。
フジテレビ系。「セレブと貧乏太郎」。
脚本:徳永友一。音楽:山下康介。主題歌:いきものがかり「気まぐれロマンティック」。挿入歌:Safarii「Hero」。ナレーション:森山周一郎。企画:後藤博幸&成河広明。プロデュース:土屋健。演出:松田秀知。第一話。
気軽に楽しめそうなドラマと見受けた。火曜日の夜には丁度よい。それにしても、大富豪の美田園アリス(上戸彩)と貧困の佐藤太郎(上地雄輔)とが偶然にも出会ったことで動き始めた物語ではあるが、両名の間の距離は、途方もなく遠いようでいて、実は意外に近くもある。なぜなら太郎の仲間たちの内二人までもが既にアリスの会社で働いていたのだからだ。
一人は、太郎の幼馴染みの安田幸子(国仲涼子)。美田園アリスの設立した会社「ラヴ・アリス」に派遣社員として勤務していて、一端は派遣契約を切られたが、デザイナーとしての力量を認められて目出度く正社員として採用された。もう一人は津田智彦(是近敦之)。彼も派遣社員として勤務しているのだろうか。職場内でも安田幸子の味方であり、夜には、幸子の父である安田啓一(山下真司)の経営する食堂に通い、太郎を含めた貧乏人仲間たちとともに過ごしている。昼間にはセレブの世界で働き、夜には貧困層の集う食堂で過ごすという奇妙な生活を、彼等二人は当たり前のように続けてきていたのだ。そのように考えるとき実は主人公である太郎のドラマにも比肩し得るドラマティクな挿話がそこには既にあるはずではないかと気付かされる。
太郎には幼い子どもが三人。愛妻は既に亡くなり、親子四人の家族。子どもたちは貧困の生活にも耐えているのみならず、太郎の「意地」をも理解する。貧乏をしていても誇りを捨ててはならないという若い父の精神を、子どもたちは健気にも応援してくれている。幼いながらも実に賢明な三人の子どもたちの年長者は、長男の佐藤一郎清水優哉)。演じる清水優哉は今年の一月から三月にかけて放送されたTBS金曜ドラマエジソンの母」で主人公の天才少年=花房賢人を演じ、今年の八月には「炎神戦隊ゴーオンジャー」GP24で森の中の樹木の妖精を演じていた。
喜劇には泣かせる要素があるものだが、今宵の話で云えば一つは、太郎に対する幸子の「ありがとう」の呟きだろう。だが、さらに味わいのあった瞬間として、太郎の抗議に怒るアリスが重臣の郡司康夫(風間杜夫)に対し同意を求めたとき、この家老が敢えて主君の主張に肯かなかったところを挙げておきたい。永年にわたり美田園家のため奉公してきた彼は、主君の無理難題を全て受け容れ続けてきた忠実な家来であり、また、上流社会の内部の常識が骨の髄まで染み込んだような「廷臣」でもあるが、それでもなお、太郎の主張した正論(感謝の気持ちを忘れるな!という論)には、共鳴せざるを得なかったのだろう。ここにも奉公人の「意地」を見ることができる。