ブラッディ・マンデイ第八話

TBS系。土曜ドラマブラッディ・マンデイ」。
原作:(作)龍門諒&(画)恵広史。脚本:渡辺雄介。主題歌:flumpool「Over the rain ひかりの橋」。音楽:井筒昭雄。音楽プロデュース:志田博英。プロデューサー:蒔田光治&神戸明&樋口優香。製作:東宝&TBS。演出:平野俊一。第八話。
宗方瞳(村岡希美)の今回の行動は、愚鈍であるだけなのか、怪しいのか、何れだろうか。「ブラッディX」に対する抗ウィルス剤について研究しているこの科学者は今回、テロリスト集団の策略の一環としてウィルスに感染したまま拘束された状態にある「ファルコン」こと高木藤丸(三浦春馬)以下五名を、生命だけでも救うため、密かに抗ウィルス剤を手渡すべく、サードアイ(正式名称「警察庁警備局公安特殊三課」)の霧島悟郎(吉沢悠)の作戦に従い、敵側との交渉の末、五人の人質の症状を正確に把握すべく診察をしたいと申し出て何とか敵地へ乗り込んだが、甚だ稚拙なことに、五色ボールペンのインクを入れる管にインクに替えて抗ウィルス剤を仕込んだものを、ファルコン等からは少々距離のある位置にある机の上に置いて去ろうとしたのだ。結果、弾みでボールペンは机から落ちて、気付いたテロリスト側の番人がその「忘れ物」を拾い上げて宗方に返してしまったのだ。どうしてファルコンの足元にでも置いておかなかったのか。宗方は五人の診察をしたのだから、足元にボールペンを置くこと位、できたはずではないか。下手なことをしたものだ。あたかも敵に気付かせたかったかのようだが、逆に云えば、テロリスト側の番人たちはどうしてあのボールペンに過剰に反応したのだろうか。見た目は単なるボールペンであって怪しいところは何もないのに。何かを知らされていたのだろうか。
これに関連して云えば、そもそもテロリスト側でも、手先として働く警視庁刑事部捜査一課の伊庭刑事(尾崎右宗)がテロリスト集団=カルト教団の教祖である獄中の神島紫門(嶋田久作)に抗ウィルス剤を手渡すための媒体として、同じようにボールペンを使用していた。宗方が同じくボールペンを使用したのは偶然の一致だろうか。
警察庁警備局公安特殊三課長の鎌田淳一郎(斎藤歩)の浅はかさにも呆れざるを得ない。
先ずは彼が、心から軽蔑し警戒していると思しい霧島一派からの、少なくとも表面上は大して意味があるとも思えない作戦の提案を素直に受け容れたのが極めて意外だったことを、指摘する必要があるかもしれない。人質の診察を願い出ることによってサードアイ側が人質の心配をしていると敵側に思い込ませ、敵を油断させてはどうか?というのが当の提案の中身で、その裏には診断の際に密かに(上述の通り)ウィルス剤を手渡してしまおう!という意図があったわけだが、この裏面の意図を知らない者にとっては、テロリスト組織を一網打尽にできるかどうかの重要な局面に敢えて決行する価値のある作戦であるとは思えないのではなかろうか。裏面の意図なんか知らされるはずもない公安特殊三課長がどうして霧島一派のこの(少なくとも表面上は)中途半端な作戦を受け容れてしまったのか。だが、これ自体は(宗方の失策を別にすれば)結果としては失敗だったわけではないから問題なかろう。
致命的な失敗だったのは、教祖=神島紫門をテロリスト側へ引き渡すに際して彼が、敵側の幹部が出てくるだろうことを予測していたことだ。「教祖を解放するのだから幹部が出てくるはずだ」みたいなことを自信満々述べていたが、何の根拠もない発想だ。むしろ大勢の警察官に包囲されるだろうことが明白であるような危険な現場に、幹部が直々に出てくるはずがないと考えるべきだろう。それに、どうせ教祖を解放するつもりがなければ人質を救出するつもりもなかったのなら、なぜテロリスト側の使者をわざわざ教祖に面会させたのだろうか。あれだけ大勢の警察官で包囲していたのだから、教祖に会わせるまでもなく逮捕して抗ウィルス剤だけ回収してもよかったはずだ。
テロリスト集団=カルト教団残党の中で、集団の指導者「J」こと神崎潤(成宮寛貴[特別出演])のブルーバード(山口龍人)に対する接し方は、何となく他の構成員とは違った関係にあるように見える。「J」はブルーバードを時々からかうが、そこには折原マヤ(吉瀬美智子)をからかうときのような、疑惑を追求するかのような意地悪さがない。