ラブシャッフル第四話

TBS系。金曜ドラマラブシャッフル」。第四話。
脚本:野島伸司。主題歌:アース・ウィンド・アンド・ファイアー「Fantasy」。挿入歌:バングルス「ETERNAL FRAME」。音楽:神坂享輔&MAYUKO&井筒昭雄。プロデューサー:伊藤一尋。制作:TBSテレビ。演出:山室大輔。
この物語を今まで形作ってきた枠組は「ラブシャッフル」と名付けられた恋人交換ゲイムであり、劇中の主要な登場人物は皆このゲイムに参加してゲイムの法の中で行動することで自己の表現をしながら自己を見詰め直してもいるわけだが、そもそも、この枠組それ自体を創出したのも劇中の人物でありゲイム参加者でもある菊田正人(谷原章介)である以上、これまで彼一人は自らを特権的な地位に置いていたのかもしれない。ところが、この物語の枠組とそこにおける支配と被支配の関係を、上条玲子(小島聖)は見破った。しかも彼の発案の根源に一つの「秘密」があること、それのみか参加者の一人に対する特別な感情もあるだろうことをも悉く見抜いた。知ることが支配することであるなら、上条玲子は菊田正人の支配を打破し得たと云える。それは物語の枠組をも乗り越えることでもあるだろう。
同じことが、世良旺次郎(松田翔太)と早川海里(吉高由里子)との関係についても云えるだろう。世良旺次郎は写真家としての特権的な立場を利用して相手の心に土足で上がり込み、暴力的な仕方で相手の「秘密」を暴き出すことを得意とするが、生憎、その技が早川海里には全く効かなかった。菊田正人によれば早川海里は「本物の芸術家」であり、そのゆえに、世良旺次郎の紛い物の力の通用する相手ではなかったのだろうか。どんな女でも支配してみせる力を持っていると思い上がっていた彼は、意外にも、一人の少女に支配されようとしているのかもしれない。
彼の無力に関連する話として、滝川陽治(大東俊介)のことも語ることができよう。
滝川陽治という若者がこの物語世界に関与したのは偶然に過ぎない。先ずは(一)大石諭吉(DAIGO)が逢沢愛瑠(香里奈)と香川芽衣貫地谷しほり)の前で自身と宇佐美啓(玉木宏)の恰好よい見せ場を作りたいと考え、(二)予め三人の劇団員を雇用して不良集団に仕立て、(三)男女四人で海へ遊びに出かけ、夜まで浜辺で遊び、(四)途中、買物のため自身と宇佐美啓が浜辺を離れた隙に、(五)不良集団に扮した劇団員が逢沢愛瑠と香川芽衣を誘拐して近所の倉庫内に拘束し、(六)大石諭吉の目論見としては、自身と宇佐美啓の二人だけで勇敢にも倉庫に討ち入って不良集団を倒し、格好よく恋人二人を救出するはずだったが、(七)実際には、誘拐事件の発生を察知した滝川陽治率いる青年ギャング集団が逸早く現場に駆け付け、逢沢愛瑠と香川芽衣を救出していたのだが、(八)何一つ裏の事情を知らなかった宇佐美啓は、真相を知るゆえに新展開をも瞬時に察知できた大石諭吉の制止も聞かず滝川陽治に喧嘩を売ってしまったのだ。
予想外の奇妙な展開に慌てた逢沢愛瑠が、不良に強いと豪語していた世良旺次郎に電話をかけて救いを求めたところ、彼は滝川陽治とは旧知の仲であるから簡単に解決できる問題だと応じたが、生憎、滝川陽治の怒りは収まらなかった。ここでも世良旺次郎は支配に失敗していた。そして結局、事態を収拾することができたのは宇佐美啓の無鉄砲ながらも「キラキラ」とした華のある行動力と大らかな人柄に他ならなかったのだ。